Side:みほ


愛里寿ちゃんが参戦したら一気に戦力が削られたのは驚いたけど、最後はお姉ちゃんとのコンビネーションで勝つ事が出来た――最後の作戦は
二段構えだったから、あのコンビネーションが発動した瞬間に、私達大洗の勝ちは確定していた。
空砲での加速って言う過激な作戦で愛里寿ちゃんの冷静な思考を奪って、意識をパンターにだけ向けさせた所で、直前で戦車ドリフトを仕掛けて
センチュリオンの砲塔を回転させる。
そうすれば、私が撃破出来なくとも、無防備な側面を曝したセンチュリオンにお姉ちゃんのティーガーⅠの砲撃が炸裂する――『西住流は、常に隙
を生じない2段構え』……小さい頃にお母さんから教わった事が役に立ったよ。

でも、私達が勝てたのは土壇場で助っ人に駆けつけてくれた皆のおかげ……ありがとうございました!!



「何言ってるのみほ、当然でしょ此れ位!ダージリンじゃないけど、こんな言葉を知ってる?カウボーイは決して仲間を裏切らないの!!」

「あら、ケイさんにお株を奪われてしまったわ。」

「お株を奪われた、其れは大事な事かな?」

「ミカ殿、其れは重大であるのではないかと思われます!!」



あはは……このノリも、高校戦車道の特徴かもね。
試合が終わって、皆と談笑するのも、戦車道の醍醐味なんだけど……



~~♪



其処に現れたのは、クマの玩具に跨った愛里寿ちゃん。えっと、如何かしたのかな?



「今日の試合、とっても楽しかった。此れは、私からのお礼と勲章。」



そう言って渡してくれたのは、ボコミュージアムで譲ってあげたレアボコ……でも良いの?此れ、欲しかったモノなんでしょ?



「良いの。とても楽しい戦車道が出来たから。……お母様の言った通り、貴女は最強にして最高の戦車乗りだった。
 そんな貴女だからこそ、此の子を貰ってあげて欲しい。」

「そっか……なら、有り難く頂くよ。大切にするね、ありがとう。」

まさか、最後の最後で、こんな事があるとは思わなかったけど、愛里寿ちゃんから貰ったレアボコは、私の最高の宝物だね……色々な事があった
試合だったけど、私達が勝った事で大洗の廃校は完全撤廃になるし、愛里寿ちゃんとの絆も紡げたから、結果的には全てがプラスになったって言
えるかな。
取り敢えず、大洗が廃校は撤回される……そう思っただけで、何だか一気に力が抜けちゃった感じだね。









ガールズ&パンツァー~隻腕の軍神~ Panzer164
処刑BGMをご用意ください!です』










Side:しほ


激闘を制したのは大洗。まぁ、勝って貰わないと困るのだから、この結果には大いに満足しているわ――特に最後の決戦には、現役を退いたにも
係わらず心が燃え上がったわね。
あれこそ正に真の戦車道にして、私が目指していた西住流の完成形だったのだから……思わず泣きそうになったわよ。
でも、其れは其れとしてとてもいい試合だったから、今度は何のしがらみもない状況で試合をしたいわね千代。



「えぇ、マッタク持って同意見よしほちゃん。
 で、其れは其れとして、あの白髪モノクルは如何しよっか?大洗廃校の張本人は、大洗が勝った事で口から魂が抜けかけてるけれど……」

「口から魂が抜けかけてるとは、相当ショックだったのでしょうけれど、だからと言ってコイツを許す筈がないでしょうに――大洗の一件だけでも業
 腹モノなのだから、キッチリ制裁させた貰うわ。」

そんな訳だから、やっちゃっていいわよ。
宜しくね、黒のカリスマ率いるnOsの皆さん。



「ガッデーーーーーーーーム!!!」

「調子くれてんじゃねぇぞオラァ!!」



――バッキィィィ!!!



「ブベラ!?」



あら、お仕置き開始の一発が総帥自らのケンカキックとは気前がいいわね?だけじゃなくて、なんで好子も一緒にケンカキックブチかましてるの?
まぁ、貴女の現役時代の性格を考えたら、白神顧問みたいな輩は絶対に許す事の出来ない最低下衆野郎な訳だから仕方ないのかも知れないし
れないけど、黒のカリスマの元祖ケンカキックと、好子の本場のケンカキックは可成り効いたでしょうねうん。
でも此れでお仕置きが終わりではないわ。寧ろこれが始まりなのよ!



「「っしゃおらぁ!!」」




天コジ名タッグが、『天コジカッター』を極め、ダウンした所に、



「行っちゃうぞ!!」

「「「「「「「「「「馬鹿やろー!!」」」」」」」」」」



天コジのコジこと小島聡が名物必殺技である『行っちゃうぞエルボー』を敢行……お決まりである、小島の『行っちゃうぞ!』の後に観客が『馬鹿や
ろー』と叫ぶお約束もね。
更に追撃としてヒロ・斎藤のセントーンプレスが炸裂し、『顔面凶器』『極悪親父のポン刀人生』と言われるヤクザにしか見えない厳つい見てくれの
後藤達俊が、現役時代の馳大臣を一時心停止にまで追い込んだ凶器のバックドロップ!
高角度の臍で投げるバックドロップは美しいわ。



「飛べない棚橋は、只のイケメンだ!」



謎のセリフと共にミサイルキックを放ったのは棚橋弘至……自分で自分をイケメンって言うって如何なの?……痴情のもつれから彼女に刺されて
も、自力で救急車呼んだ根性は凄いと思うけど。



「文科省だか何だか知らねぇけど、調子に乗んなよ?一番スゲェのは、プロレスと戦車道なんだよ!」

「ダーーーーー!!!!」



プロレス史上に残る名台詞のオマージュを言ってくれた中邑真輔と、雄たけびを上げたスコット・ノートンのツープラトンは、ノートンが超竜ボムで持
ち上げた所に中邑が飛びついて三角締めを極めて、そしてそのまま超竜ボム出叩き付けるという荒業!凄いわ此れ。

「千代、此れだけのプロレスラーの必殺技、ツープラトンが生で拝めるとは凄く幸運だと思わない?」

「そうね、こんな機会は滅多にないモノ……でも、未だ肝心な人が出てないわ。」

「そう言えば、まだ彼は出てないわね?今のプロレスを語る上で外す事の出来ない天才が。」

彼の技は華麗にして強烈、そしてその一発で静まり返った会場をヒート100に出来るモノばかりだから期待してしまうわ。
そろそろ出番だと思うのだけれど……



――チョイチョイ……



「ふ、ふぇ?ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」



肩を何者かにつつかれた白神顧問は振り返った次の瞬間に悲鳴を上げたけれど、まぁ振り返った先に居たら驚くわよね、グレート・ムタ。
何時の間に変身したのか分からないけど、素顔の方じゃなくてこっちで来るとは思ってなかったわ……きっと、こっちの方が良いと思ったのでしょう
ね。かの天龍源一郎が『武藤はアドリブの天才』と言っていたけど、筋書き通りの台本は彼には合わないという事なのでしょう。
正に型に捕らわれない天才……彼とみほは天才同士、良い友達になれるかもしれないわ。



――ブシュー!!



「ギャァァァァァァ!!!!」



なんて事を考えてる間に、ムタは得意の毒霧攻撃!あ、今回は赤なのね。
そして悶絶する白神に、閃光妖術(シャイニング・ウィザード)を叩き込むと、ノートンをコーナーポスト代わりにして必殺のムーンサルトプレス!!
うん、ムーンサルトを生で見れただけでも満足だわ。
さて、出番ですよ馳大臣。



「クソガキィィィ!!」



ダウンした白神の両足をロックすると、そのまま回転を開始し必殺のジャイアントスウィング!
同時に観客からの回転数のカウントが!……10回、20回まだ止まらずに、30回、40回!そして……



「「「「「「「「「「68!69!!70!!!」」」」」」」」」」



何と、自己最多記録を更新する70回を達成!!50歳を過ぎて此れとは……国会議員になってもトレーニングは怠って無かったと言う事ね。



「おーし!此れでラストだ!やっちまってくれしほさん、千代さん!!」

「ついに出番ね千代……やるわよ!!」

「えぇ、やりましょう!!」



喰らいなさい、日本戦車道の双璧である西住流と島田流の奇跡のコンビネーション!一期一会無二入魂の家元合体ツープラトン!!


「「ダブルキン肉バスター!!」」

「ぺぎゃらっぱぁ!?」


私の右腕と千代の左腕で白神の首をロックして、私が左手で白神の右足を、千代が右手で白神の左足を掴んでジャンプし、そのまま着地!ツープ
ラトンだからこそ出来る『返す事の出来ないキン肉バスター』、決まったわね。
さて、肉体的制裁は此れで終わったけれど、貴方への制裁は此れで終わりではないわよ白神顧問。



「馳大臣。」

「辻君、証拠が揃ったのか?」

「えぇ、これでもかと言う位に。マッタク持って呆れてしまいますよ。」



良いタイミングで来てくれたわね辻局長?では、彼に死刑宣告をして上げて。



「白神特別顧問、何故貴方が躍起になって大洗を廃校にしたいのか、其れが分かりましたよ……貴方は学園艦の解体業者と癒着し、学園艦の統
 廃合によって廃艦になった学園艦の解体を癒着業者に依頼し、仕事を回した見返りとして多額の金銭を渡されたり、高級クラブで接待を受けたり
 していたみたいですね?
 今回の大洗の廃校取り消しをなかった事にして、更に廃校の前倒しをしたのは、既に大洗女子学園の学園艦の解体を斡旋していたから……呆
 れてモノが言えませんよ。
 貴方の事を快く思っていない文科省の職員に聞いたら、これでもかと言う位に黒い噂が出て来て、裏を取ってみたら全て事実だったので驚いて
 います……この事実は、既に安倍首相に伝えてあります。
 首相は此れまで見た事も無い位に怒り心頭でしたよ……『純粋な少女たちの思いを私腹を肥やす為に踏みにじるとは何事か!』とね。
 序に、此の癒着は検察庁にもたれ込んでおいたので、数日中に貴方の家には特捜部のガサ入れが入ると思いますよ。」

「辻!貴様!!!」

「あぁ、其れと、貴方が独断で行ったルール改正に対して各国から非難が来ていましたっけ……『大会を盛り上げる為に国際ルールをフラッグ戦に
 したというのに、其れを殲滅戦ルールに戻すとはどういう事だ』ってね。
 此れに関しては当然の事、フラッグ戦であるからこそ戦力で劣る国が勝つ事も出来るでしょうが、殲滅戦では結局強力な戦力を持っている国が
 勝つ事が試合が始まる前から見えてしまっている。そんな出来ゲーム的な大会など、誰も興味を持ちませんから。
 其れから仮にとは言え、カールを認可した事にも批判の声が上がっています……カールの認可は取り消しますし、ルールもフラッグ戦に戻します
 が、勝手な事をした貴方はついさっき、与党野党の全会一致で議員資格の剥奪が決まりました。
 そして、議員でなくなれば普通に逮捕されますので、大人しく逮捕されて塀の中で己の愚行を悔いて下さい。」

「貴様、恩を仇で返す心算か!!
 お前が今局長と言うポストに居る事が出来るのは誰のおかげだと思っている!ワシが目を付けてやったからこそ、お前はその若さで局長になる
 事が出来たのだぞ!!」

「何を勘違いしているのか知りませんが、私が出世できたのは貴方のおかではなく馳大臣のおかげです。馳大臣は、若かった私の才能を買ってく
 れて良くしてくださいました。
 私を自分の手駒にしようとしていた貴方とは違うんですよ。と言うか、正直言って貴方はとても鬱陶しかったのでもう会いたくないですよ。
 まぁ、其れも今となっては如何でも良い事です、もう会う事も無いでしょうから……それでは、結果が決まっている裁判の後での塀の中での生活
 を満喫してください。」

「そんな……助けてはくれぬのか!!」

「助けませんよ。
 そもそも助けて貰えると思ってたんですか?……有り得ませんね。廃校宣告を受けてなお、其れに対して抗った大洗の皆に対して貴方が行った
 のは許し難く残酷な事だ。
 『全国大会で優勝すれば廃校は無かった事にする』と約束した私が其れを許すと思っているのですか?……許す筈がないでしょう!!
 兎に角貴方は此れで終わりです……残りの人生、どん底で生きて下さい。」

「そんな、そんなぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」



うん、実に見事な死刑宣告だったわ……あ~~、白神の奴、完全に口から魂が抜けてるわ。さらにショックのあまりに一気に髪の色が抜け落ちて
白神の名にピッタリの白髪になっちゃったわね、御愁傷様。
でも、取り敢えずスッキリはしたわね?



「ホント、すっきりしたわ。
 あの人の余計な謀で実現した試合でなかったら、もっと楽しめたのだから……でも、其れは其れとして、私今回の試合で益々みほちゃんの事が
 気に入っちゃったわしほちゃん♪」

「島田流家元が、次女とは言え西住の娘を気に入るとか如何なのよちよきち?」

「え~~?良いじゃない~~?
 だって、本当に感動したのよ私……圧倒的に劣る戦力であるにも拘らず試合から逃げないって事だけでも大したモノだけれど、全国大会ではラ
 イバルとして戦った相手が大洗の為に駆けつけてくれた。
 でも其れだけだと数が同じになったに過ぎないのに、言い方は悪いけれど『寄せ集め』のチームを下手に纏める事はしないで、逆に夫々の『色』
 を尊重する事で予想外のコンビネーションが生まれ、加算ではなく乗算の戦力にしてしまった。
 そして最後の愛里寿との戦いのラストターン……アレは本当に見事な作戦だったわ。
 ティーガーⅠの空砲による加速と言う過激かつ予想外の行動に愛里寿の意識は完全にみほさんのパンターにだけ向いてしまい、戦車ドリフトを
 行ったパンターを追ってセンチュリオンの砲塔を回転させてしまった。
 結果としては相討ちだったけれど、あそこでセンチュリオンが撃破判定にならなかったとしても、その瞬間に無防備な側面を曝したセンチュリオン
 にはティーガーⅠの88mmが突き刺さって撃破していた。
 西住流の戦車道は、常に隙を生じない二段構え……現役の頃、しほちゃんが口癖のように言っていた事だったけど、アレは正に貴女の言う通り
 だったわ。」



私が言った事を覚えていたの?



「あ、其れは俺も覚えてんぞしほ!」

「好子?と言うか、言葉遣いが昔に戻ったままよ!?」

「良いじゃねぇか、余りの熱い試合展開に気持ちが現役時代に戻っちまったんだよ!つーか、久々に戦車に乗りたくなったぜ。
 其れよりも千代、お前みほちゃんが気に入ったからって何をする気だ?」



あぁ、そうね。私も其れが聞きたかったの。私が言った事を覚えていたとかは如何でも良いのよこの際。



「実はね、島田流が大洗女子学園のスポンサーになろうかなぁって💛」



……はい?ちょっと千代、貴女『島田流が大洗女子学園のスポンサーになる』って言った?
御免なさい、ちょっと早めの加齢性の難聴が出て来たみたいだわ……耳鼻科に相談して補聴器を考えた方が良いかしら?



「安心しろしほ、俺にも同じように聞こえたから聞き違いじゃねぇ。」

「其処は聞き違いであってほしかったわ!!
 あのねぇ、何考えとんじゃいちよきち!島田流が西住の次女が隊長を務める大洗女子学園のスポンサーになるって、どげんこつか言うとね!」

「興奮すると九州弁が出るのは相変わらずなのね?
 まぁ、確かに驚くべき事であるとは理解してるけれど、ちゃんと理由はあるの。
 一番の理由は大洗女子学園の保有戦車よ。性能面もだけれど、パンターとティーガーⅡ以外の戦車は20年間整備されていなかったモノを修理
 して使っているのでしょう?
 20年間放置されていた戦車を動けるようにしたのは見事だけれど、ハッキリ言ってあの戦車でこの先も戦い続ける事は不可能――必ず近い内
 に無理が来て修理不能な状態になるのは明白。
 でもそうなったら大洗は戦車道を続ける事が出来なくなって、折角みほちゃんが見つけた道が途絶えてしまうでしょ?そんなの寂しいじゃない。
 だから、島田流が後ろ盾になろうかと思って。島田流がバックに付けば、新たな戦車を用意するのも容易だから。
 其れに、しほちゃんが大洗のバックに付いたら、『西住流の家元は自分の娘を贔屓してる』って思われるでしょ?西住流は黒森峰のスポンサー
 なのだから。」

「う……其れは確かに其の通りだわ。」

まほは今年で黒森峰を卒業するとは言え、僅かな期間であっても私が大洗の支援をしたら、娘を依怙贔屓していると思われてしまうでしょうから。
そう思われる位なら、マスコミに話題を提供する事になるとは言え、貴女が大洗女子学園の支援をするのが良いかも知れないわ……良いわ、大
洗の事は貴女に任せるわ千代。
島田流がバックに居るとなれば、白神のような奴がまた現れたとしても、大洗女子学園を易々と廃校対象にはしないでしょうからね。



「うふ、ありがとうしほちゃん♪」

「……みほと、みほの仲間の為よ。」

「ったく、テメェは相変わらず素直じゃねぇなぁしほ?」

「煩いわよ好子!」

「ハッハッハ、怒るなよ!
 だけど、久々に20年前の戦車道3強の隊長が集まったんだ、今日は飲もうぜ?北海道は良い酒と良い肴があるから楽しもうぜ?」

「好子……そうね、今日はそうしましょう。」

20年ぶりの戦車の友情に花を咲かせるのも一興だわ。
それにしても、廃校はなしになったけれど、ある意味で此れからが大変かもしれないわよみほ?……ふふ、島田流が大洗のスポンサーになったと
知ったらあの子は一体どんな顔をするのか。
其れは其れとして、お疲れ様みほ、まほ……大洗連合の皆さん。
『戦車道にマグレなし、あるのは実力のみ』――その言葉を体現したような見事な戦いでした。本当に、お疲れ様。








――――――








Side:みほ


試合が終わったら、アンチョビさんが連れて来てたアンツィオの隊員によって、あっという間に試合会場は宴会会場に早変わり……まぁ、祝勝会っ
て言う事で良いかな此れは。
皆思い思いに楽しんでるみたい。愛里寿ちゃんも楽しんでる?



「うん、とっても楽しい。此れまでは試合が終われば其処までだったから、こんなのは初めて。
 でも、敵味方、勝者敗者関係なく楽しめるのは素晴らしいと思う……其れに料理も美味しい。特にこの鉄板ナポリタンは絶品。
 オリーブオイルは苦手だったんだけど、此のナポリタンはオリーブオイルをふんだんに使ってるのに、オリーブオイル特有の匂いがしなくて、とって
 も美味しかった。」

「其れは、一番搾りのエクストラヴァージンオイルじゃなくて二番絞り以降のピュアオイルだったからじゃないかな?
 ピュアオイルなら主張し過ぎないから、オリーブオイルが苦手な人でも食べる事が出来るから。」

「そうだったんだ、知らなかった。」



ふふ、アンツィオのイタリアンは美味しいから堪能すると良いよ。
其れで、楽しんでるお姉ちゃん?



「みほか……あぁ、楽しんでいるよ。安斎の料理は美味しくてつい食べ過ぎてしまうな……彼女と一緒に暮らしたら間違いなく太るだろうね。」

「そうかなぁ?普段のトレーニングがあるから案外変わらないかもよ?」

「かもな……みほ、今日の試合は楽しかったな……」

「お姉ちゃん……」

そうだね、とても楽しかった。
大洗の廃校撤回って言う条件が無かったらもっと楽しかったかもだけど、其れでもとても楽しかったよ。



「あぁ、本当に楽しかった。
 お前と久しぶりに一緒のチームで戦ったと言うもあるかも知れないし、お前が上官で私が部下と言うのもあったかもな……だからこそ、言いたい
 事があるんだ。
 みほ、エリカと小梅と一緒に黒森峰に戻ってこないか?」

「……え?」

「元々お前とエリカと小梅が破門になったのはお祖母様の独断であり、そのお祖母様も毒が抜け、お前達の破門は撤回されているし、黒森峰には
 お前達を悪く言う奴は居ない。
 だから、戻ってこないか?」

「お姉ちゃん……」

ありがとう……だけど、其れは出来ないよ。
黒森峰の皆が私とエリカさんと小梅さんを悪く言ってないのは分かるけど、『今』の私達が居るべきは大洗なんだよお姉ちゃん――大洗女子学園
が、今の私達の居場所なの。
だから、黒森峰には戻れない。



「そうか……予想していた答えではあるが、ハッキリ言われるとはな。
 だが、それで良い……お前は大洗と言う新たな地で見つけた自分だけの戦車道に邁進しろ――何時の日か、またこうして一緒に戦いたいな。」

「うん、何時の日か絶対に!約束だよ!!」

「あぁ、約束だ。」



――ギュ!



あわわ……まさか、ハグされるとは思ってなかったから驚いたけど、私も右腕だけだけどお姉ちゃんを思い切りハグした――アハハ、こんな事だけ
でも気持ちって伝わるんだね。



「お疲れ様みほ……お前は私の自慢の妹だ。」

「お姉ちゃんも、私の自慢のお姉ちゃんだよ。」

ありがとうお姉ちゃん、そして助っ人に駆けつけて来てくれた皆……皆のおかげで勝つ事が出来た――重ね重ね、本当にありがとう。
今は、それ以外は言えないよ。









 To Be Continued… 





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