Side:ミカ


愛里寿をみほさん達の前に引き出す為に、愛里寿の元に参上した訳だけれど、如何やら彼女は私が思っていた以上に成長しているみたいだね?
……マダマダ少女特有のあどけなさを残しながらも、その顔は一流の戦車乗りのモノだからね。
此れは、私も本気で行かないと即撃破と言う事になりかねないかな?……愛里寿の才能は、私を遥かに凌駕しているから、一瞬でも気を抜いたら
その瞬間にお陀仏だ。

「アキ、ミッコ……彼女は此れまでの相手とは違う……私達の持てる力の全てを出し尽くす――そうしても勝てるかどうか分からない相手だから。」

「ミカがそう言うって事は、相当の相手なんだね?」

「上等!思い切りやってやるぜ!!」



ありがとうアキ、ミッコ……君達のおかげで、私は私の戦車道が出来るからね。
さぁ、勝負と行こうか愛里寿?……私が島田の家を出てから3年――その間に磨き上げた君の戦車道を見せてくれ。



「言われなくてもその心算……姉様、本気で行きます。」

「うん、本気でおいで愛里寿。」

君に全てを押し付けて家を出た無責任な姉のせめてもの償いとして、君の本気を全力で受け止めさせて貰うよ愛里寿……何よりも、君の全力を受
け止めないと言う選択肢はないからね。
それにしても、君とこうして戦うのは何度目かな?



「覚えていません……でも、私の記憶が確かなら、私はただの一度も姉様に勝った事は無い――だから、此処で初勝利を挙げさせて貰います。」

「ふ、そう来なくてはね。」

風は、今此処に交わった……始めようか愛里寿、西住さん達とは違う、最大の姉妹喧嘩を。



「望む所です……ボコのようにボコボコにして上げます。」

「いや、全身包帯塗れにされるのは勘弁してほしいかな?」

と言うか如何にフィクションの世界とは言え、あの熊はあの満身創痍の状態で普通に生活できるのか不思議だよ。
戦車の性能的には其方が有利だが、戦車の性能では決まらないのが戦車道だ……私の仕事は君を倒す事ではないけれど、君が満足するだけ
の一曲を奏でさせて貰うとしようかな。










ガールズ&パンツァー~隻腕の軍神~ Panzer161
見せてやる大洗の戦車道を!です』










No Side


ミカと愛里寿がエンカウントしていた時でも戦局は動くのだ……各地の戦局を見て行くと――


「建物は所詮見せかけだから形だけの張りぼて同然よ!崩れた所で戦車が白旗になる事は無いわ!だから思いっきり突っ込みなさい!!」

「了解ジェロニモ!!」

「誰がジェロニモよ!!」


まずはウェスタンゾーンで、レオポン+カチューシャ+ノンナのチームが、迫りくるパーシングを連続で撃破!!
戦車の性能的にはパーシングに劣るものの、其処はカチューシャの指示を受けたレオポンが映画のセットである建物に突っ込むと言う、超強引な
ショートカットでパーシングの前に出て奇襲染みた一発をかまして撃破すると、意表を突かれて動きを止めたもう1輌のパーシングを、ノンナのIS-2
が的確に撃ち抜き撃破したのだ。


「流石はカッちゃん、ナイス作戦!」

「カッちゃんって、気安すぎるわよ!」

「カッちゃんですか……ふむ、そう言う呼び方もアリかも知れませんねカッちゃん?」

「ノンナも乗るんじゃないわよ!」

「ノンナも乗んなって?巧い、座布団2枚!!」

「要らないわよ!」


即興チームにも拘らず、このチームはノリが良い上に連携が巧く取れているのは凄い事だろう。
カチューシャとノンナの間には絶対の信頼と絆が有るので連携が見事なのは当然だが、其処に入り込んだレオポンがマッタク邪魔になっていない
のは、偏に車長であるナカジマの人当たりの良さによるところが大きいだろう。
気さくで飾らず、フレンドリーかつ『優しいお姉さん』的な所が、動のカチューシャと静のノンナとベストマッチだったと言う事なのだろう。
まずはこのチームでパーシング2輌を撃破したが、ウェスタンゾーンは広く、このチームには属していない者も戦っていた。


「もんもーー!!」


それが、アリクイチーム。
パーシング相手に、性能で劣るソミュアS35で奮闘中だ。
全国大会の決勝戦では、戦車を動かす事にすら苦労していた彼女達だが、今では立派に戦車を動かせるようになり、格上の相手とも互角に戦え
るようになっていた。


「ホイ。」

「ぞな!!」


その一端を担っているのが、廃校で生活している時に行った筋力トレーニングによるパワーの増加だ。
戦車道を始めた頃は全員ひ弱で、砲弾を持つ事すらままならなかった面々が、今では車内で砲弾をパスして渡すなんて芸当をやってのける程に
までパワーアップしているのだ。
にも拘らず、ムキムキメガマッチョにはならず、トレーニング前と変わらない体型を維持しているのだから、一体どんなトレーニングをしたのが是非と
も教えて欲しい物である。
つーか教えて下さいマジで。主に筋力は付けたいけどムキムキにはなりたくない女性達に。

兎も角、此の筋力アップにより、砲弾の装填速度は大洗でもトップクラスとなった訳だが、其れだけでは済まず、装填士兼砲手のぴよたんは、装填
→照準を合わせて砲撃のタイムラグを失くすために、細かい狙いを定める工程をカットしたのだ。
此れにより、正確に相手のウィークポイントを狙う事は出来なくなったが、逆に細かい狙いを付けない代わりに驚異的な連続攻撃が可能になった
のである。
極端な事を言えば、アリクイチームのソミュアS35は、相手が1発撃つ間に2発撃つ事が可能なのであり、手数は2倍!
そしてその凄まじい攻撃を受けた相手は、最初の頃こそウィークポイントに当たってないから大丈夫とは思っても、時間が経つにつれて、此の連続
攻撃を受け続けたら拙いと言う心理状況になって来る……そうなれば、焦りが出て指示や操作にミスが出てくるのは避けられない。
事実、アリクイチームと対峙しているパーシングも、徐々に動きが悪くなり、砲撃の間隔は広くなり、砲撃の正確さも下がってきているのだから。


「今だもも!!」

「行くのにゃ!」

「やったるっちゃ!!」


一瞬の隙をついてパーシングに肉薄すると、略ゼロ距離からの攻撃を行って、パーシングを撃破!!
性能では圧倒的に劣るソミュアS35が単騎でパーシングを撃破したと言うのは、戦車道史に残るであろう快挙であると言っても過言ではない。
兎に角これで、遊園地に入ってから大学選抜は立て続けに5輌撃破され残存車輌は16に。
対する大洗連合は遊園地に入ってからは1輌も撃破されずに残存車輌は24……殲滅戦ルールでの8輌差と言うのは決して小さくないだろう。








――――――








その頃、T-28重戦車と言う化け物と出くわしたダージリン、エクレール、麻子のチームは……


「おい、本当にこっちで良いのか?」

「えぇ、その通りよ麻子さん。」

「この先にあるのはアーチ形の門……ダージリン様は何を考えているのやら。」


T-28重戦車と、パーシング2輌のチームをアーチ形の門がある場所まで誘導していた――攻守共にT-28重戦車には劣るこのチームだが、機動力
だけは勝っている。
最も足の遅いチャーチルですら、T-28重戦車よりは速く動けるので、付かず離れずの距離を保ちながら誘導するのは難しくはない上に、麻子の操
るクルセイダーがチョロチョロとちょっかいを出して挑発してくれるお陰で、より効果的に誘導出来たと言える。
そんな3輌は先ずはアーチ形の門を通り抜ける――割とギリギリの幅だったが、チャーチルとクルセイダー、ARL-44は問題なく通る事が出来た。
だが――



――ガコン!



T-28重戦車は、2連履帯のせいで幅が広いために通る事が出来ない。
召喚士は通す、ガードも通す、キマリは通さない!とばかりに、アーチ形門はT-28重戦車をシャットアウト。
幅広の履帯が仇となって通る事が出来ないと言うのは何とも間抜け極まりない……お供のパーシングが門を壊せば良いんじゃないかとも思うだろ
うが、下手に門を壊せばその瓦礫でT-28重戦車の砲身が使い物にならなくなるので其れは出来ないのだ。

此れこそがダージリンの狙いだ。
門を通る事が出来なければ、否応なしにT-28重戦車は後退せざるを得ない――パーシングは進撃してくるかもしれないが、T-28重戦車が後退し
てくれれば儲けものだ。
如何に防御力が高いとは言っても、其れは正面装甲に限ればの事……後面装甲は51mmと案外貧弱であり、この装甲厚ならばARL-44の主砲で
確実に撃破可能なのである。
絶対に後ろを見せたくない戦車に、後を見せざるを得ない選択を迫ったダージリンは見事だろう。



――ガコン



だが此処で、T-28重戦車はワンタッチで外側の履帯をパージしてギリギリではあるがアーチ形門を通過して来た――確かにT-28重戦車は外側の
履帯を外す事が出来たが、本来は外すのに2時間程かかるのだが、其れをワンタッチで行うと言うのは些か反則の様な気がするが、あくまでもこ
のワンタッチ機能は、当時の取り外し作業を簡易化し、更にパージ機構も45年ルールで認められている機材で取り付けたモノだから問題はマッタ
クないのだ。
となれば、ダージリンの読みは外れた事になるのだが……


「おい、何処を見ているデカブツ?お前の相手はこの私だ。」


アーチ型門を抜けた先にある橋で、クルセイダーの操縦士である麻子がキューポラから身を乗り出し、手招きして挑発。
其れだけならば如何と言う事は無いのだが、麻子の抑揚に乏しい話し方と、眠そうな顔で言われた挑発の一言は緊張感の欠片もない代わりに滅
茶苦茶ムカつく事この上ない。
半分瞼が下りた奴から、抑揚のない声で『バーカ』と言われたのを想像してみると良い……めっちゃムカ付くでしょ?人によっちゃ殺意すら湧くでし
ょうに。


「何だ、来ないのかデカブツ?否、ウスノロの方が正しいか?
 其れとも、その主砲ならばどこに当てようとも倒せるクルセイダーに向かってこない所を見ると臆病者の方が適当か?……まぁ、所詮はパワーだ
 けのウスノロ――どこかの野菜の戦士の『お前を殺すぞセル』でしかない奴が私達に勝てる筈がないか。
 よしんばここで私達を倒したとしても、お前達が西住さんに勝てる道理はないな。さっさと家に帰れ役立たず。」


更に煽る煽る。
如何やらこの天才少女はみほから作戦立案能力を吸収しただけでなく、『歩く毒舌製造機』『此れがホントの挑発伝説』『いやもうアイツの挑発は
伝説じゃなくて神話だろマジで』等の異名を持つ、大洗一口の悪い女(但し挑発に限る)である逸見エリカから挑発技術まで吸収してしまったようで
ある。天才ハンパねぇです。

その挑発への礼とばかりに、T-28重戦車は主砲を放つが、戦車内に戻った麻子の神懸かった操縦により、クルセイダーはその攻撃を華麗に回避
し、T-28重戦車の誘導を始める。
移動を始めたクルセイダーを追うようにT-28重戦車は移動を始め、お供のパーシングは別行動を開始――門を抜けた先にクルセイダーしか居な
かった事で、何かあると考えて別行動を選択したのだ。この辺の判断を行ったのは、パーシングの1輌に乗るメグミ……中隊長を務めて居るのは
伊達ではないらしい。

さて、移動を開始したT-28重戦車だが、当然ながらクルセイダーの動きに付いて行く事は出来て居なかった。
T-28重戦車の最大速度は19kmと可成り鈍足なのに対し、クルセイダーはリミッターをかけた状態でもMAX44kmと倍以上の速度を誇るのだから
そもそも付いて行ける筈がない。
だが其れでも、圧倒的な破壊力の主砲は射程も長いので、遥か先を行くクルセイダーを捉える事は出来るのだが、撃っても撃ってもその事如くが
回避されてしまうのだ。其れこそ、回避と運の値が255でカンストしてるんじゃないかと言う位に。
そんな感じの追いかけっこが続き、麻子はT-28重戦車をニューベルング広場の橋に誘導したのだが、此れこそがT-28重戦車を撃破する為の1手
だ。


「漸く来ましたわね……撃て。」


橋の下で、ほぼ垂直の状態で待機していたダージリンのチャーチルが橋を砲撃して崩し、T-28重戦車の最大の弱点である底面を顕わにする。
大凡優雅とはかけ離れた一撃ではあるが、その一撃の効果は重い。


「エクレールさん、今ですわ。」

「お任せ下さい、ダージリン様!」


その顕わになった弱点に対して、エクレールのARL-44の主砲が炸裂し、T-28重戦車は弱点を貫かれて白旗判定に!!2輌目のシークレットは、
結局大洗連合の戦車を1輌も撃破出来ずに退場となってしまった……何しに出て来たんだお前?

目的を果たした麻子とエクレールはその場から離脱するが、無理な態勢を取っていたダージリンのチャーチルは、自ら砲撃した橋の瓦礫で身動き
が取れなくなっており、離脱は出来なかった。


「作戦は成功しましたが、この状況での我々の生存率は……」

「ゼロ、でしょう?後はお任せしますわ、みほさん。」


其れを見逃すメグミではなく、身動きできないチャーチルをもう1輌のパーシングとの挟撃で撃破!
此れにより、大洗連合と大学選抜は1輌ずつ失う事になったのだが、1輌も撃破出来ずに撃破された戦車と、相手のシークレットである強力戦車を
撃破する一手を担った末に撃破された戦車ではまったく違う。
ダージリンのチャーチルは、己のすべき事をした上で舞台から姿を消した――その散り様は、実に優雅であったと言うべきだろう。








――――――








なつかし横町では、カバチームとカモチームが、此の場所を生かした戦いを展開していた――その戦いとは……


「マスターアームオン!ファイア!!」


カモチームがパーシングを誘導し、書き割りを使って風景に同化したⅢ突が誘導されたパーシングを近距離から砲撃して撃破すると言うステルスカ
ウンター作戦、通称『マカロニ作戦ツヴァイ』!
アンツィオが全国大会で使った『マカロニ作戦』のオマージュだが、其の効果は非常に高く、風景に同化したⅢ突は立て続けにパーシングを2輌撃
破!長砲身75mmの破壊力をガッツリと見せつけたのだ。


「よーし、次行ってみよう!」


此れで、大洗連合と大学選抜の車輌数の差は10輌に達し、殲滅戦に於ける勝敗の目安となる2桁の車輌数の差が付いてしまったのであった。








――――――








だが、戦車道には殲滅戦に於けるコールドゲームルールなどないので試合は続く。
このラーテ広場で戦いを繰り広げているのは……


「根性ーーーー!!!」

「いざ、果敢に攻めるべき!!」

「馬鹿め、その程度でやられるか!!」


アヒルチーム、絹代、ルクリリと言う脳筋チーム!
如何してコイツ等が組んでしまったのか?と思う所だが、脳筋を舐めてはいけない……脳筋が集った時に起こる化学反応は時としてノーベル賞級
の科学者ですら想像出来ない効果を生み出すのだ。
そして、この脳筋チームはその稀なケースだったらしく……


「ハッ!易々と騙された気分は如何だ?……ブチかませ西、磯部!!」

「了解でありますルクリリ殿!!」

「喰らえ!西住隊長の最大奥義……戦車プレス!!!」


ルクリリのマチルダがパーシング2輌をキルゾーンに誘導した所で、絹代と典子が戦車プレスをパーシングに叩き込み、そのまま撃破!!
如何に攻守速を高いバランスで備えたパーシングと言えど、上から戦車が降って来ては堪ったモノではない……と言うか、そもそもにしてこんな非
常識な攻撃を戦車は想定していないのだから、喰らったら撃破されるのは当然だろう。
此れで、大学選抜の残存車輌は残り11……かなり苦しくなって来ただろう。








――――――








更にボカージュ迷路では、あんこうチームとカメチームが、ルミ率いるパーシング部隊を相手にしていた。
あんこうが誘導し、待ち伏せ作戦に適したカメが奇襲を仕掛けると言う布陣だが、あんこうはただの誘導役に非ず――ヘッツァーの居る場所へ誘
動しつつも、パーシングを巧みに誘い込み――


「撃て!」

「OK、吹き飛びな!」


即刻撃破!
更にそれだけではなく、もう1輌のパーシングも、見事に誘導して待ち伏せていたヘッツァーの前まで引き摺り出して、そのままヘッツァーの一撃で
撃破だ。
その手並みは実に鮮やかだ――だが、鮮やかだからこそ疑問が残るのだ。


「何だこれは……天性の勘の良さじゃ済まないぞ?」


余りにも的確過ぎる対処に疑問を抱いたルミは、天性の勘の良さ以外の何かがあると思い、キューポラの上に立って周囲を見渡すが――



――ガァッデェェェム!テメェ如きが軍神立ちしてんじゃねぇぞオラァ!!



「!!!???」


突如襲って来た謎の殺気により、キューポラの中に身を収める事になった――実は、ルミがキューポラに立った映像は、客席に設置されたオーロラ
ヴィジョンにも映し出されたのだが、其れにnOsの総帥である黒のカリスマがブチ切れていたのだ。
分かり易く言うのなら『あー!誰の許可得て軍神立ちしてんだオラ!軍神立ちが認められんのはみぽりんだけだろうが!まがい物が猿真似してん
じゃねぇぞファッキン!』と言った所だ。
其れを喰らったら確かにキューポラ内に引っ込みたくもなるだろう――誰だって、黒のカリスマのSTFは喰らいたくないのだから。
因みに、此のピンポイントでの威嚇(?)がなかった場合、ルミの視線はジェットコースターへと向いていた事になり、其処でGPSを行っていたアンチ
ョビ達を発見していたであろう――其れを考えると、黒のカリスマはnOsの総帥として見事なアシストをしたと言えるだろう。
だが、此れで残存車輌数は9輌……対する大洗連合は23輌――大学選抜は可成り厳しい状況となって来たと言えるだろう。……殲滅戦で15輌
の差が付いたら逆転は絶対に不可能と言われている……その車輌数の差まであと1輌となってしまったのだから。

尚、ルミは……


「アンタ継続の隊長だったのよね?何であのイカレヘアバンドを隊長に任命した訳!?
 あんな人間として色々と問題ありそうな奴を隊長に任命するとか、アンタ脳ミソ湧いてんじゃないの、この眼鏡チビ!!」

「逸見妹、お前本当に口が悪いな!?
 仕方ないだろ、アイツ以外に適任が居なかったのよ当時は!って言うか眼鏡は兎も角、私はチビじゃない!お前の所の隊長と大差ないだろ!」

「他の2人と比べたら充分チビでしょ?あ、序に貧乳?」

「よし、殺す。」


この場に突如現れた、元祖毒舌製造機逸見エリカによって迷路ゾーンから強制的に離脱させられていた……黒のカリスマに威嚇されるわ、エリカ
に言いたい放題言われるわ、何と言うか色々と頑張ってくれ。








――――――








Side:ミカ


うん、愛里寿は私が思っていた以上に成長しているみたいだね……互いに決定打を欠いているから未だに決着がついてないけれど、愛里寿の実
力は、私が島田の家に居た頃よりもはるかに上昇しているのは間違いない。
レベル、トリック、タクティクス……その全てが、私が島田の家に居た頃とは比べ物にならないモノだ。君がドレだけ厳しい練習をして来たのか、想
像も出来ないな此れは。
君が此処まで成長していたのは姉として嬉しい限りだよ愛里寿……君との戦いの時間はとても楽しい物だった――だけど、其れもそろそろ終わり
みたいだ。



――ガコン!!



「んな、転輪が!!」



BT-42がクリスティ式を採用した履帯が無くても走れる戦車であるとは言え、転輪だけで動いて居たらいずれ限界が来る――転輪が吹っ飛んでし
まうのは分かっていたよ。
そして、転輪が吹っ飛んだ戦車は派手にスピンした挙げ句に転がって勝手に白旗判定になるからね……今回は、私の負けみたいだよ愛里寿。



「姉様……」

「君は今この時、私を超えたんだ……其れを誇ると良い。
 だが、私に勝った事で慢心はしない事だ――みほさんは私の10倍強い……精々呑み込まれないように注意して行くと良い。」

「はい、御忠告感謝します姉様……」



此れで愛里寿が動くのは間違いない……だが、果たして愛里寿が動いて戦局を覆す事が出来るのかとても楽しみではあるね。
だが、其れよりも……

「大洗の皆さんの勝利を願っているよ。」



――ポロロン



大洗を率いる隻腕の軍神に、勝利を齎す旋律を……みほさん、君ならば理不尽な運命を覆す事が出来る――隻腕の軍神がドレだけの実力者で
あるのかを、示してあげてくれ。
みほさんの戦車道から学ぶ事は決して少なくないからね……この機会に愛里寿も学ぶと良いよ、みほさんの型に捕らわれない自由な戦車道って
て言うモノをね。









 To Be Continued… 





キャラクター補足