Side:みほ
どうも皆さん、大洗女子学園戦車隊隊長の西住みほです。
絶対王者と称されていた黒森峰を下して全国制覇を成し遂げた私は……一応、覚悟していた事ではあるんだけど、現在戦車道雑誌の取材
に絶賛対応中!!
エリカさんと小梅さん、そして梓ちゃんが一緒に取材に応じてくれてるから何とかなってるけど、一人だったら絶対に途中でバタンキューだよ。
「西住隊長、我々戦車道関係の取材陣としては、失礼ですが大洗が黒森峰を下すとは思っていませんでした。
正に大金星を超えた超金星……圧倒的に劣る戦力で黒森峰に勝てたのは何故ですか?」
「其れは、私が誰よりも……黒森峰の隊長よりも、西住流の師範よりも『西住流』を知っていた事と、大洗の皆が己の限界を超える力を発揮し
てくれたと言う事に尽きます。」
序盤の黒森峰の電撃戦も、アリクイさんチームが居なかったらあそこでフラッグ車を仕留められていたでしょう――ですが、アリクイさんチームの
の身を挺した防御でフラッグ車は無事でした。
そして、その後も同じです。
市街地でのマウスには驚かされましたが、そのマウスもカメさんチームがヘッツァーをカタパルトにしてくれた事で、必殺の戦車プレスが決まって
撃破に至った訳ですからね。
そして、それ以上に最後の最終決戦ではライガーのティーガーⅡと、レオポンのポルシェティーガーが入り口を塞いでくれたおかげで、私の作戦
通りに持って行く事が出来ました――勿論、伏兵として小梅さんって言う切り札を切るタイミングも含めてね。
「赤星小梅選手こそが切り札だったと?」
「はい、実際に切り札でしたから。」
こう言ったら失礼かもしれないけれど、あそこで現れたのがエリカさんや梓ちゃんだった、多分負けてた――お姉ちゃんですら、無意識の内に
『西住みほのパートナー』から除外してた小梅さんだったからこそ勝つ事が出来たんだと思います。
そう言う意味では、今大会のMVPは間違いなく小梅さんでしたよ。
「お褒めに預かり光栄ですみほさん。エリカさん、副隊長……勝った。」
「ドヤ顔やめい。殴りたくなるわ小梅。」
「ジョークでやったとしても、殴りたくなる笑顔は初めて見ましたよ……」
「あははは……」
軽口的なやり取りなんだけど、此れもまた雑誌記者さんには美味しいネタになるかもだね。
取り敢えずインタビューは無事に終了し、その後は私、梓ちゃん、エリカさん、小梅さんの4人で大洗の隊長車と同じカラーリングのパンターの
模型をバックに表紙の写真と、巻頭グラビアを撮影して取材は終了……なんて言うか、戦車道の試合以上に疲れた気分だね。
ガールズ&パンツァー~隻腕の軍神~ Panzer138
『大会後のホッとした一時です♪』
そんなこんなで気付けばそろそろ夏休み、週刊戦車道の『第63回戦車道高校生大会特集号』は何て言うか凄いボリュームだね?
見た感じだけでも、何時もの誌面の倍はあるんじゃないかな?此れもう週刊誌じゃなくて、月刊ジャン○並の分厚さだよね?
「其れは仕方ないでありますよ西住殿。
隻腕の軍神が率いる無名の弱小校が、西住流の次期後継者と言われている姉住殿率いる絶対王者たる黒森峰を、終始圧倒した上で完
全勝利をしたのですから!
此れは、戦車道ファンならば興奮しない方がオカシイであります!!」
「みぽりんってば、すっかり全国区の有名人だよね?――そんな人と一緒に居られるなんて、此れは完全にあんこうチームは勝ち組だよ!」
「沙織、煩い。」
「麻子の言う通りよ沙織。
興奮するのは分からない事じゃないけど、少しセーブしなさい……そうじゃないと、只の軽薄女に見えるわよ?」
「うわ、エリリン辛辣!
でもさ、此れは興奮せずにはいられないよ!だってこの雑誌、表紙はみぽりんとエリリンと梅りんと梓ちゃんな上に、巻頭グラビアもみぽりん
達なんだよ!?
基本はみぽりんとのツーショットで、みぽりんと梓ちゃんはみぽりんが回転砲塔に背を預けて、梓ちゃんがキューポラに腰かけた状態で何か話
してる感じ、みぽりんと梅りんは、戦車をバックに梅りんがバインダーとペンを持って、みぽりんが神妙な面持ちで其れに対応してる『試合前の
作戦会議風』なのに、みぽりんとエリリンのツーショットは、ジャケットの上着を脱いだみぽりんをエリリンが後ろから抱きしめて、無い方の腕に
口付けてるって言うアダルティーな雰囲気なんだから興奮するでしょ!!」
「「興奮の一番の理由は其処かい!!」」
うん、ジャストタイミングで突っ込んだ私とエリカさんは絶対に悪くない。いや、沙織さんの言う事も分からないじゃないけどね?
梓ちゃんと小梅さんとのツーショットは、戦車道の練習後や戦車道の試合前にはあるシチュエーションではあるんだけど、エリカさんとのツーシ
ョットだけは戦車道の彼是関係ないからね。
って言うか、採用された写真が其れで良かったかな?
エリカさんとのツーショット写真は梓ちゃんや小梅さんとの3倍近い写真が撮られてて、その中には結構アレなモノもあったからね――『無い方
の腕のジャケットの袖に腕を絡ませるエリカさん』は未だ良い方で、凄いのなると『ジャケットの上着をはだけさせた私に、ジャケットの上着をは
だけさせたエリカさんがしな垂れかかってる』のとか、『引き裂かれた黒森峰の校旗を持ってる私と、鍵十字に引き裂かれた黒森峰のジャケッ
トを口に咥えたエリカさん』とか、『黒のカリスマ風な衣装を身に纏って、漆黒のパンターの前でサムズダウンする私と中指を立てるエリカさん』
とか、凄まじい『闇』を感じさせるものが多かったからね……撮影中、エリカさんがキレかけたのは仕方ないと思うんだ、うん。
そんな中で、闇成分皆無のこの写真を選んだ辺り、編集部の人は未だ理性が残ってたのかも知れないね――触れてるように見えるけど、実
際にはエリカさんの唇は肩には触れてなかった訳だしね。
「其れよりも、記事の内容は如何かな?頑張ってインタビューに応えてみたんだけど……」
「其れはもう、バッチリでありますよ西住殿!
西住殿だけでなく、逸見殿に赤星殿、澤副隊長殿の話まで確りと収録されているであります!!独占インタビューは、全10ページに亘る大
特集でありますよ!!」
そ、そうなんだ。
取材内容は覚えてるし、私達が如何答えたかも覚えてるからインタビューのページ其の物は見なくても良いんだけどインタビューページの最後
に添えられた文章には目が行ったね。
『以上が大洗女子学園の隊長西住みほと副隊長澤梓、そして黒森峰時代に西住みほの副長であった逸見エリカと、片腕であった赤星
小梅 へのインタビューの全文である。
彼女達へのインタビューを通して、小生は戦車道の奥深さを改めて痛感させられた――戦車の性能差も、練度ですらも真なる天才の
前には何の意味もなさないと言う事を感じたからだ。
西住みほと言う稀代の天才に加え、その教えを受け継いだ澤梓、そのライバルであり親友でもある逸見エリカと赤星小梅の存在が、
大洗 に埋もれていた才能を発掘し研磨したからこそ、この超金星に繋がったのだろう。
改めて、大洗女子学園の潜在能力の高さと、其れを引き出した『隻腕の軍神』こと、西住みほには頭が下がる思いである。
一般には『大洗の奇跡』とも言われている今大会の結果だが、小生は、この結果は『奇跡』ではなく、西住みほが逸見エリカと赤星小
梅を引き連れて大洗に転校してきたその時に『確定』していたのではないと愚考する次第だ。
『隻腕の軍神』の戦車道は、我等の予測を遥かに上回っていたのだから……』
あはは……少しばかり煽り過ぎかなと思ったけど、確かにその可能性は否定できないよ――まさか、大洗に此処まで戦車道の才能がある人
が居るとは思わなかったからね。
でも、そのお陰で黒森峰を倒して全国制覇が出来たんだから良かったと思ってるよ――此れで大洗の廃校は撤回された事になる訳だから。
「だね……本当に君達はよくやってくれたよ西住ちゃん……大洗を守ってくれてありがとね。」
「会長さん……そんな、頭をあげてください。
学園艦を守る事が出来たのは私一人だけの力じゃありません――大洗の皆の力があったからこそだと思うんです……実際問題として皆の
力が無かったら、黒森峰を倒す事は出来なかったと思いますから。」
「其れでも、だよ――君には感謝の言葉しかないんだ西住ちゃん。
てかね、ぶっちゃけて言うと西住ちゃん達が戦車道の部活を作ろうと考えてくれててマジ助かったんだよね~?お蔭さんで、戦車道を履修し
てくれるって確信できたからさ。
今だから白状するけど、もしも戦車道を取ってくれなかった場合は、どんな手を使ってでも戦車道に引き摺り込む心算だったからね?」
「ちょっと会長、貴女何する心算だった訳?」
「まぁ、分かり易い手だよ逸見ちゃん――『戦車道を取ってくれないなら学園に居られなくする。でも転校手続きは行わせない』って脅しにかか
る心算だった。」
「学園に居られないのに転校できない……高校卒業の単位を得る事が出来なくなる、と言う訳ですね?」
「正解だよ赤星ちゃん……其れ位の事をしてでも、優勝しなくちゃならなかったからね。」
「そうだったんですか……まぁ、単純な廃校じゃなくて、学園艦の廃艦となれば生徒達だけでなく学園艦で暮らしている全ての人が住む場所を
失う訳ですから、其れ位必死になるのも仕方ないですよ。」
ですが会長さん、其れやってたら生徒会の皆さんは、間違いなく今頃病院のベットの上でしたよ?
エリカさんの拳が炸裂して、アンドリューが噛みついて、ロンメルが燃やした所に小梅さんの暗殺術が……
「いや~、そいつは怖いね?って言うか暗殺術使えんの赤星ちゃん!?」
「黒森峰機甲科、西住みほ遊撃隊に所属していた生徒は、全員が他校から来た偵察部隊を秘密裏に捕縛する為に『西住流裏戦車道』とも
言える『西住流暗殺術』を身に付けているんです。
私は、その中でも特に優れた才能を持っていたらしくて、ターゲットに気付かれずに無力化する程度は訳のない事なんですよ会長さん。」
「西住流暗殺術……そんな物が存在してただなんて驚きであります!!」
驚きでしょ優花里さん?
まぁ、全部嘘なんだけどね♪
――ドンガラガッッチョンチョン!!
――急所に当たった~~!効果は抜群だ~~~!!
元黒森峰組と麻子さん以外、皆見事にずっこけたね。
しかも示したようにバッチリのタイミングで――うん、素人コントコンテストとかに出たら、ずっこけぶりだけは1番になれるかも知れないよ。ネタによ
っては上位も狙えるかもだよ♪
でも、そんなにずっこける様な事だったかなぁ?
「みぽりん、今の流れで其れは無いよ!
梅りんがあまりにも真剣に言うから本当に西住流暗殺術って言うのがあると思っちゃったんだよ!?」
「もし存在していたら、御教授願いたいと思っていたのですが、残念です。」
「いや、何を教わろうとしてるの華!?」
「沙織、少し落ち着け。西住さん流のゲルマンジョークと言う奴だろう。
なぜゲルマンかと言えば、西住流はドイツ戦車を使う流派だと秋山さんから聞いてな……アメリカンジョークと言うのはオカシイと思った。」
成程、そう来ましたか麻子さん。
でも、暗殺術云々はジョークとしても、黒森峰機甲科の生徒が戦車道を行ってるどの学校よりも偵察者を捕らえる事に長けてるのは間違いな
いと思う。
少なくとも残ってる記録では、黒森峰に偵察に行った他校の生徒が、黒森峰との試合が終わる前に戻って来た事はお母さんが隊長だった頃
に1度だけあっただけみたいだからね。
「あの、西住殿……その黒森峰から生還した生徒と言うのは若しかして……」
「うん、優花里さんのお母さんが隊長を務めてた頃の大洗の生徒。って言うかぶっちゃけ当時の隊長。」
「だ~~~!やっぱりでありますか!!
今更ながらに、自分の母親が何者だったのか分からなくなって来たでありますよ~~!元ヤンキーで戦車隊の隊長だったとか、衝撃的にも
程があるであります!!
……尤も、そのお陰で最近はお母さんとの会話が弾むのでありますが。」
「あはは……其れなら其れで良かったって言う事にしようか。」
まぁ、優花里さんもサンダースやアンツィオに潜入して無事に戻って来たんだから、確実にお母さんの血を継いでるとは思うけどね。
準決勝ではエルヴィンさんと一緒にプラウダの偵察を行ってくれたおかげで作戦の大筋が決まった様なモノだからね――この功績だけでも優
花里さんとエルヴィンさんは一尉に昇格させても良いかもだよ。
其れを踏まえたら、副隊長の梓ちゃんは重戦車キラーとしての功績で一佐、エリカさんとナカジマさんは三佐、試合を決める切り札となってくれ
た小梅さんは二佐に昇格だね♪
「其れなら、西住ちゃんは准将から中将に昇格だね♪
いや、いっその事『将軍』を名乗っても良いんじゃないかな?『大洗の隻腕将軍』って凄く強そうじゃん?」
「あは、其れも良いですね会長さん♪」
『隻腕の軍神』に続く二つ名『大洗の隻腕将軍』も良い感じですよ。――ふっふっふ、隻腕の軍神だけじゃなく、大洗の隻腕将軍の名も全国に
轟かせないとだね。
「其れについては心配いらないよ西住ちゃん……西住ちゃんへの取材は、マダマダ依頼が来てっからね~~~♪
まぁ、其処で確りバッチリ大洗の隻腕将軍をアピールしちゃってよ♪」
「あはは……が、頑張ります。」
ヤッパリマダマダ取材のスケジュールはあるんだね……あんまり得意じゃないんだけど、戦車道に於ける前人未到の大記録を打ち立てた学
校の隊長として、此れは甘んじて受け入れるしかないかな?
其れに、考えようによっては私の戦車道をアピールする大きな機会だから、これを機に私の戦車道を多くの人に知って貰えると思えば取材も
悪い物じゃないからね。
でもまさか、略毎日放課後に取材を受ける事になるとは思わなかったけどね……取材を受けてる間、代わりに練習の指揮をしてくれた梓ちゃ
んには、今度寄港した時にお好み焼き屋『道』さんにでも連れて行ってあげないとだね。
――――――
Side:???
ふぅ……マッタクもってこんな事になるとは思っていませんでした。
大洗女子学園がまさかの優勝をしてしまうとは……此れまで廃艦を告げられた学園艦の生徒は、その事実に絶望するか、或いは悲しみに暮
れるか、もしくは逆上すると言うのが常でしたが、彼女――角谷杏はそのドレでもなく、『廃艦回避』の一手を此方に突き付けて来た。
『大した実績が無いって理由で廃艦にするって言うなら、実績を残したら廃艦にするな』と言う条件を――其れが、戦車道の全国大会優勝だ
った訳ですが、まさかそれを成し遂げてしまうとは。
此れで、大洗女子学園を廃校にする理由は無くなりました――あの時の会話はボイスレコーダーに録音されていますから、『そんな事は言っ
てない』とは言えませんからね。
と、言う事で事が済めばドレだけ楽だった事か。
「馳大臣、大洗の廃校は戦車道の全国優勝でなくなったのではありませんか?」
「辻君、確かに其の通りだ、そうなる筈だった。
だが、其れを認めたくない者が文科省内部に存在している――分かり易く言うなら、学園艦の解体業者と癒着している文科省の職員が居る
んだ……そういう連中が、大洗の廃艦を推し進めている。
君の言うボイスレコーダーの内容にしても『考えた結果大洗は廃校になると決定された』と言う事でゴリ押しする心算だろう……君らしくもな
いが、確約書を作っておくべきだったね。」
其れは、そう言われてしまうと何も言う事は出来ません――ですが大臣、この様な事態を野放しにして良いのですか!?
大洗女子学園の全国制覇は、戦車道界隈に大きな風を吹かせ、我が国の戦車道人気はかつてない程に高まっています!――で、あるにも
関わらず、優勝校を廃校にしたとなれば世間からのバッシングは免れませんし、戦車道の世界大会開催に関してもマイナスのイメージになっ
てしまいますよ!!
「俺もそう思っているけど、業者と癒着してる局員の連中のバックには、俺の前任者の文科省大臣が居る……あのタヌキがバックに居る以上
此方が何をしても無駄だろう。
其れこそ、関係職員をジャイアントスウィングで50回ぶん回して投げたとしてもね。」
「裏投げと、ノーザンライトスープレックスは?」
「其れでも良いんだけど、タッグの時は俺が決めるよりもムトちゃんがムーンサルトで決める事が多かったからなぁ……俺個人としては鎌固め
かリバースSTFが決め技だけどね。」
現役時代は意外と芸達者でしたからね大臣は。
ではなくて、この事態を如何されるのですか大臣!!一歩間違えば、戦車道の世界大会開催も危ぶまれる事態ですよ此れは!!
「いま俺達に出来る事は何もないよ辻君。
だが、必ずや機はやって来る――機を待ち、期を見て、気をもって戦う……戦いの基本だ。
大洗女子学園を廃校にしない一手は必ず存在する筈だ――だから、今はその期が来るのを待つのが最善の策だ……尤も出来る限りの手
を打っておくに越した事は無いけれどね。
俺は現役時代の人脈を生かして色々とやってみるよ……蝶野やムトちゃんも協力してくれるかもしれないからな。
君は君の方で動いてくれ辻君――出来れば、解体業者と癒着局員、そして俺の前任者との関係を洗い出してくれると助かる。」
「了解しました大臣。」
ヤレヤレ、大洗女子学園の優勝で、全てがスッキリと治まると思ったのですが、如何にもそうは行かないらしい――ですが、大人の汚い事情
によって、死力を尽くして戦った少女達の思いが踏みにじられる事など有ってはならない。
恐らくは、夏休み中に廃艦の手続きは済んでしまうでしょうが、其れすらもなかった事にする一手を用意しようではありませんか。
文科省局長・辻連太、力を尽くさせて頂きましょう。
――――――
Side:みほ
彼是取材を受けた日々が続いて、気が付いたら夏休み!
戦車隊の皆の成績は、戦車道履修特典で大幅に上乗せされてるから、通信簿は揃いも揃ってオール5!……なんだけど、私とエリカさんと小
梅さんと梓ちゃんは、全ての教科が『5+』って言う謎の評価だったからね。
で、今日は寄港日――って言うか、夏休みの間は学園艦は大洗に停泊してるんだけどね。
さて、其れじゃあお出掛けしようか梓ちゃん?
「あ、あの私で良いんですか西住隊長?
その、逸見先輩や赤星先輩を差し置いてって言うのは微妙に気が引けるんですけど……」
「其れについては心配ないよ梓ちゃん。
エリカさんも小梅さんも納得してくれたからね――って言うか寧ろ『隊長としては副隊長の活躍を労うのは普通でしょ』って言われちゃったか
らね。」
だから、今日は目一杯楽しもう梓ちゃん♪
「は、はい!宜しくお願いします西住隊長!!」
「はい、ブー!
今日は戦車道じゃ無いんだから隊長はなしの方向で行こうか梓ちゃん?」
「へ?……あの、その……分かりました西住隊長――じゃなくて、みほさん。」
うん、それで良いよ♪
其れじゃあ、夏休み初日のお出掛けを始めるとしようか?アンドリューとロンメルも一緒にね。
いっくよ~~?ぱんつぁ~ふぉ~~~♪
「Ich verstehe, Captain Nishizumi!(了解しました、西住隊長!)」
「だから隊長じゃないってば。」
まぁ、この後のお出掛けは梓ちゃんと思い切り楽しんだよ――ウィンドウショッピングに、ボーリングにゲームセンターにカラオケ、挙げ句の果
てには水戸駅前のデパ地下と南町の地下にあるアニメイ○とまで回ったからね。
……そのア○メイトで『MGフリーダムガンダムVer2.0』の他、タ○ヤ製の戦車のプラモデルを何個か買った私も大概かな――しかも、買った戦車
車は全部大洗女子学園保有の戦車だからね。
そしてそれらを全て大洗女子学園のカラーで作ろうと思ってるとか、私も大分大概だね。
「良いんじゃないですかみほさん?
私だってⅢ号とティーガーⅠのプラモデル買って、私のパーソナルカラーであるパールホワイトに塗装しようと思ってましたから。」
「あ、そうなんだ?」
「そうなんです。
お互いに完成したら、ジオラマ作って撮影とか如何でしょう?
ジオラマを作る事は出来なくても、大洗シーサイドステーションに新たにオープンした『ガルパンギャラリー』には大型のジオラマがあるとの事で
すから、其処を使えば大迫力の写真が撮れると思いますので。」
ふふ、其れは良いね梓ちゃん?
大迫力のジオラマって言うのは心が躍るよ……なら、夏休み中に買ったプラモデルを完成させないとね♪
で、十数日後に私と梓ちゃんはシーサイドステーションのガルパンギャラリーを訪れた訳なんだけど……ジオラマ云々以前に完全に甘く見てた
よこの場所を。
大洗女子学園の全生徒がプリントされたマグカップ位はあると思ってたけど、パンツァージャケットのインナーと上着、スカートがセット品として
売られてるとは思わなかったよ!しかも、ジャケットの背には夫々のチームのエンブレム入りだしね!!
まぁ、其れだけ大洗女子学年の全国制覇は衝撃的だったって気う事なのかも知れないけどさ。
でも、なんだろう……私の勘が、此のまま平静に夏休みが終わる事は無いって告げてる……私は自分の勘を信じてるけど、夏休み中に一体
何が起きるって言うんだろう?
この時、私は夏休み中に起こる事は、マッタクもって予測出来ていなかった――まさか、あんな事になるなんて思っても居なかったからね。
To Be Continued…
キャラクター補足
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