Side:しほ
如何やらみほは、2回戦も突破したようですね?
殆ど素人集団と言っても過言ではない大洗女子学園を率いて、ベスト4に進出するとは、其れだけでも大したモノだと評価するに値すると言うモ
ノでしょうね……私に同じ事をしろと言われたら、多分無理でしょうからね。
その事実だけでもみほの類稀なる才能が見て取れる訳ですが……
「くぁーーー!!みほめ、黒森峰を去ったにもかかわらず他校で戦車道を続けているとは……何と言う事か!!
しほ、お前はこの事を知っておったのかーーー!!」
お母様は、如何にも其れを認めたくないようですね?
知っていたかどうかと聞かれれば、当然ながら知っていましたよお母様――みほが、大洗に転校しても戦車道を続ける事位は分かっていました
し、そもそも西住流を破門された程度の事で、あの子が戦車道を辞めるとは到底思っていません。
あの子は、心の底から戦車道が好きなのですからね。
「西住流を破門されながら戦車道を続けるとは、何たる恥さらしか!!」
「お言葉ですがお母様、みほは最早西住流を破門されたのですから、何処で何をしようと勝手ではありませんか?
そもそも、みほは西住流を名乗ってはいませんし、試合に関しても勝っているのですから、此方がわざわざ出向いてとやかく言う必要は無いの
ではないかと思いますが?」
「ふん、破門されたとは言え、西住の女が辺境の地で、無名の一団を率いているなどと言う事が既に恥の極みよ――次の準決勝で敗北したら、
その時は破門どころか勘当を言い渡してやるわい!」
何と言うか、最早この人が本当に私の母親であるのかすら疑いたくなってくるわ……みほを破門するだけでなく、準決勝で敗れたら勘当を言い
渡すだなんてね。
ですがお母様、その機会は永遠に訪れないと思いますよ?……みほは、必ずや準決勝も突破するでしょうからね。
ガールズ&パンツァー~隻腕の軍神~ Panzer124
『次は準決勝、プラウダ戦です』
Side:みほ
アンツィオとの2回戦を制して、次はいよいよ準決勝――相手は、去年の準優勝校であるプラウダだから、此れまで以上に気を引き締めて行か
ないとだよ。
絶対王者と言われた黒森峰でも一筋縄ではいかなかった相手だから、キッチリと作戦を立てて挑まないと瞬殺される可能性があるしね。
「準決勝の相手は去年の準優勝校のプラウダでありますね!
西住殿と逸見殿と赤星殿にとっては、ある意味で因縁の相手とも言うべきライバル校!此れは、戦車道ファン垂涎の一戦でありますよ!
事実、準決勝の組み合わせに関しては、2回戦の結果と合わせて週刊戦車道の最新号に載っていますし。」
「え?そうなの優花里さん?」
「はい、お読みになられますか?」
「うん、ちょっと見せてもらっていいかな。」
ドレドレ……
『第63回戦車道全国高校生大会、ベスト4が出揃う。
第63回戦車道高校生大会も2回戦が終了してベスト4が出揃った。
準決勝にコマを進めたベスト4は、10連覇中の絶対王者『黒森峰女学院』、ベスト4の常連で、過去には準優勝の経験もある『聖グロリアーナ
女学院』、去年の準優勝校で、ここ数年は黒森峰の対抗馬となっている『プラウダ高校』、そして初出場の無名校ながら、1回戦でサンダース
を、2回戦でアンツィオを倒して準決勝までコマを進めた今大会のダークホース『大洗女子学園』。
この4校の中で注目すべきは、矢張り大洗女子学園だろう。
去年の黒森峰で遊撃隊で活躍していた西住みほ、逸見エリカ、赤星小梅が大洗に『移籍』していただけでなく、中学戦車道で『軍神を継ぐ者』
として名を馳せた澤梓を有し、更には今年から戦車道を復活させたとは思えない程の隊員のレベルの高さ……正にダークホースと言うに相応
しい大洗が、去年の準優勝校であるプラウダと激突すると言うのは注目せざるを得ない。
ミーハーな事を言わせて貰うのならば、プラウダは西住みほ、逸見エリカ、赤星小梅の3人が大洗に移籍する切っ掛けとなった相手とも言えな
くもないので、ある種の『因縁の対決』であると言えるだろう。
隻腕の軍神率いる大洗が、地吹雪のカチューシャ率いるプラウダに対してどのように戦うのか、試合が始まる前から楽しみである。』
成程、こう来たかぁ?
なんて言うか、週刊戦車道のライターさんは、記事を書くのが巧いと言うか、読者の興味を誘導する事に長けてるって感じがするかな――こう言
う風に書かれたら、嫌でも『大洗vsプラウダ』に興味を持っちゃうからね。
「うわぁ、注目されてるじゃん私達……だけど、なんで次の相手がみぽりん達の因縁の相手になるの?」
「みほさんとエリカさんと小梅さんは、去年は黒森峰の生徒だったのですから当然去年の大会の決勝戦でプラウダとは戦ったのでしょうけれど、
其れだけで、因縁の相手と言うのは……」
あはは……やっぱり其処は気になるよね?――もう、話しちゃってもいいよねエリカさん、小梅さん?
「そうね、良いんじゃない?」
「もう、隠す事でもありませんからね。」
「なら、全部話すとしようかな。」
去年の大会の決勝は黒森峰とプラウダで、どちらも一歩も退かない一進一退の攻防だったんだけど、試合中に黒森峰の戦車とプラウダの戦車
が川に滑落しちゃったんだ――前日の大雨で増水した激流の川にね。
幾ら戦車道に使われる戦車が特殊なカーボンで安全を確保してるとは言っても、其れはあくまでも砲撃や外的な衝撃に対してだけで、キューポ
ラやハッチの隙間からの浸水までは防げない……だから、滑落した戦車の乗員は溺死しちゃう可能性があったんだ。
私とエリカさんと小梅さんと理子さん――あ、理子さんは黒森峰の時の友達ね。兎も角、私達4人は命綱を付けた上で川に飛び込んで、濁流に
呑み込まれた戦車の乗員を助けたんだよ。
黒森峰の生徒だけじゃなくて、プラウダの生徒もね。
「だ、濁流に飛び込むって、幾ら命綱を付けてるとは言え度胸がハンパないよみぽりん!エリリンとうめリンもだけど!!」
「まぁ、人命に関わる事態だったから、度胸が如何のじゃなかったのかも知れないがな……だが、凄いな西住さん達は。」
「私は会場で見ていましたが、あの救出劇には本当に心を打たれました。
黒森峰の生徒だけでなく、プラウダの生徒まで助けたその様は、『同じ戦車道を邁進する者同士、試合相手である前に友である』と言う事をひ
しひしと感じたでありますよ!!」
「お三方とも、とても素晴らしい事をなさったのですね……心より尊敬します。」
「成程、確かに其れは凄い事だが……だが、其れでは因縁の相手とは言えない気がするのだが……」
流石はエルヴィンさん、鋭いね?
そう、此れだけだったら私とプラウダの間に因縁なんて無いよ――でも、私達の行動に異を唱える人が居て、その人が私とエリカさんと小梅さん
を西住流から破門しんだ……もしもあの試合であんな事が無かったらって考えれば、プラウダが因縁の相手だって言うのも、あながち間違いじ
ゃないんだよ。
「はぁ?
何処の誰かは知らないけど、濁流に飛び込んで人命救助をしたみぽりん達の行動に異を唱えるって、何考えてんのその人!!
しかも破門って、一体ドンだけの権力を持ってるの、その人!!」
「そう問われたら、その人物は現西住流家元であり、私のお祖母ちゃんだと答える事になるよ沙織さん。」
「「「「「「「「「「は!?」」」」」」」」」
「……皆さん、鳩が豆鉄砲喰らった様な顔してますね?」
「まぁ、事情を知らなければそうなるのも仕方ないんじゃない?
普通に考えて、濁流に飛び込む危険性を叱るなら兎も角、人命救助を否定して、孫娘を破門するなんて信じられないでしょうからね。」
まぁ、そう言う訳で、私とエリカさんと小梅さんはお祖母ちゃんに破門を言い渡されて大洗に来たの。――梓ちゃんは私を追って、クロエちゃんは
梓ちゃんに誘われてね。
濁流に飛び込んだ危険性を叱られるなら兎も角、仲間の命を助けたのを否定されるのは絶対に認められないし、同じチームの仲間なら兎も角、
相手校の選手は見捨てるべきだなんて言うのは絶対に間違ってるから。
私は、お祖母ちゃんの言う西住流を真っ向から否定して、私の戦車道をやる為に大洗に来たって言う事なんだ。
「まぁ、この辺の事情はマスコミ関係の人も知らない事で、精々ネットのアングラな掲示板でまことしやかに噂されていた程度なんだけどね。
だから、週刊戦車道的には私達3人を黒森峰から『追放』された事にして、その原因の一端と言えなくもないプラウダとの『因縁』って事を記事
として書いたんだと思う。」
「そんな事情があったんだ……でも、其れならみぽりん絶対に負けられないじゃん!
こうなったら何が何でも優勝して、みぽりん達は間違ってなかったんだって言う事を、みぽりんのお祖母ちゃんに見せつけてやらないと気が済
まないよ!
相手が去年の準優勝校だからって怯む事なくガンガン行って絶対に勝とうよ!!」
「武部さんの言う通りだ隊長!
スポーツマンたるもの、敵味方双方に危機的状況が訪れた時には敵味方問わずに助けてこそ!敵は見捨てろなんて言うのは、スポーツマン
シップに反する事だからな!」
「戦場であるのならば、敵は斬り捨てねばなるまいが、試合であるのならば死者を出してはならん……隊長達の行動は、何一つ間違ってない。
エルヴィン・ロンメルの名を名乗る者として、そう断言するぞ!」
皆……ありがとう。
其れじゃあ気を取り直して準決勝の作戦会議なんだけど、プラウダは何故か学園艦が年中雪に覆われてる場所な上に、もしも捕まったらノンナ
さんに何をされるか分からないから、今回は優花里さんの偵察はなし。
とは言え、去年も戦った相手だから使ってくる戦車と編成は大体の見当が付くけどね。――だから問題は、此方の車輌数。
準決勝では使える戦車は15台に増えるから、プラウダの戦力は現時点で大洗の2倍以上……フラッグ戦なら引っくり返せない差じゃないけど、
欲を言うならせめてもう1台は欲しい所だよ。
88mm搭載型のレストアはまだ終わってないから兎も角として、ルノーR35だけでも出したい所ではあるね。
「其れについては問題ないよ西住ちゃん!新しいメンバー連れて来たからさ♪」
「会長さん!
新たな戦車道履修者を連れて来てくれたんですか!!」
「おうともさ!
作戦とかその他諸々は西住ちゃん達に丸投げしてっけど、アタシはアタシに出来る事をキッチリやってる心算だよん?――じゃ、入って来て。」
「「「失礼します。」」」
渡りに船と言うかの如くに、会長さんが新たな戦車道履修者を連れて来てくれたみたい――何となく、生徒会長の権限を使って、有無を言わせ
ずに連れてきた感がしなくもないんだけどね。
で、現れたのは同じような背格好のおかっぱ頭の3人組……何処かで見た事があるような……?
「アンタ達、風紀委員じゃない!!」
「あ~~!思い出した、そど子さん!!」
「げ、そど子か……」
「そど子って呼ばないで!私は園みどり子!!
――会長さんに頼まれて、私達風紀委員3人は此れより戦車道チームに所属する事になったから宜しく頼むわね。……冷泉さん、戦車道でも
ボケっとしてたら許さないわよ!」
「煩いぞそど子……」
「そど子じゃないわよ!!」
アハハ……まさか風紀委員を連れてくるとは予想外でしたよ会長さん。
でも、此れでルノーR35の人員も確保できたので、プラウダとの戦力差は『2倍以上』から『2倍近く』に下方修正されました――準決勝まで、あま
り時間は有りませんが、風紀委員の皆さんもキッチリ鍛えますので♪
「まぁ、西住ちゃんなら短期間でも最低限のレベルまでは鍛えられるっしょ?
ずぶの素人の集団を、ベスト4まで連れてきたその実力は計り知れないって思ってるからねアタシは――んで、風紀委員のチーム名は?」
「『カモチーム』で如何でしょう?
ルノーR35のシルエットって、真横から見ると水面を泳ぐカモに見えなくもないですから……アヒルかなとも思ったんですけど、既にアヒルチーム
はあるので、こっちは『カモ』って言う事で。」
「カモチームか~~?ま、良いんじゃないの?
涸沼のカモを使った鴨鍋は、大洗のアンコウ鍋と並ぶ茨城の冬の味覚だから親しみやすい感じもすっからね~~♪」
なら、風紀委員の皆さんが搭乗するルノーR35はカモチームで。
準決勝までの時間は余りないけど、私も出来る限りの方法で皆さんを鍛えるから、試合では思い切り暴れちゃって下さいね?
「任せておいて西住隊長!
風紀委員の名に懸けて、試合でも校則違反者はバシバシ取り締まってやるわ!!」
「アハハ……其れはちょっと試合とは関係ないかな?」
でも、その意気があれば案外行けるかも知れないね?――意志の力は、時として予想もしない力を発揮する事があるって言うのは、私が実際
に体験した事でもあるからね。
此れは、次のプラウダ戦も大物食いが出来るかも知れないよ。
「ふ……滾ってるみたいねみほ。――隊長、闘気の貯蔵は充分か?」
「モチのロンだよエリカさん!!」
――轟!!
「試合前からの軍神招来……プラウダの永久凍土をも溶かす程の熱量ですね此れは?流石は隻腕の軍神です。」
「褒め言葉と受け取ておくよ小梅さん。」
何よりも、去年の覇者を争ったプラウダとの再戦な上に、今年はカチューシャさんが隊長を務めてる訳だからね……其れで、闘気が滾らないって
言うのは戦車乗りとして有り得ないからね。
「アッハッハ、頼もしいねぇ西住ちゃん!
そんな西住ちゃんにお願いがあるんだけど、今夜逸見ちゃんと赤星ちゃんと澤ちゃんを連れてアタシの寮の部屋に来てくれっかね?
ちょ~~っと、話したい事があるんだよ。」
「ほえ?私は構いませんけど、エリカさんと小梅さんと梓ちゃんは?」
「私と小梅は大丈夫よ――ってか、同じ部屋なんだから大丈夫に決まってるでしょうに。」
「アハハ……そうだったね。
其れで、梓ちゃんの方は如何かな?」
「私も大丈夫です隊長。――そもそも、隊長が呼ばれているのに副隊長が参加しないなんて言う選択肢は最初っから存在していませんから。」
と言う事は全員参加OKって事だね。
なので、御呼ばれした全員で行けると思いますよ会長さん。
「そうかい、そいつは良かった。
取り敢えず、御馳走用意して待ってるよ――アタシの知る限りの最高の一品を用意しとくから、其処は期待してくれて良いよ。」
「其れは、何とも楽しみですね♪」
会長さんの一品は楽しみだけど、準決勝を前にして話したい事が有るって言うのは、何かあると勘繰っちゃうかな?――私の考えすぎかも知れ
ないけど、こう言う呼び出しがあった時って言うのはまず間違いなく重要な事柄が有るって相場が決まってるからね。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
と言う訳で、学校が終わった後で一度寮に戻って、其れから会長さんの家――正確には寮部屋にやって来た訳なんだけど、まさか雪がチラホラ
と舞ってるは思わなかったよ。
って言うか、夏場に雪って、大洗の学園艦は一体何処を航行してるのやらだよ!!
「まぁ、次の相手はプラウダだから、寒冷地に慣れる訓練って言う事で。
取り敢えず、今日は良く来てくれたね西住ちゃん、逸見ちゃん、赤星ちゃん、澤ちゃん――来てくれた事に感謝してるよ。」
「此方こそ、お呼びに預かり光栄です。
其れで会長さん、話したい事って言うのは……」
「あ~~……まぁ、其れは食事でもしながら話そうか?
大洗の学園艦は現在南半球を航行中だから、冬の真っただ中に居る訳なんだよ……だから、アンコウ鍋で温まりながら話をしようじゃない。」
「はぁ、まぁそう言う事なら。」
夏場に鍋なんてとは思ったけど、冬の南半球を航行してるなら全然ありだからね。
それにしてもいい匂いですね?このアンコウ鍋は会長さんのお手製なんですか?
「うん、アタシのお手製だよ。
アンコウ鍋ってのは味噌仕立てが基本なんだけど、その味噌に一工夫が必要でね……味噌に湯通ししたあん肝を合わせて練り込む事で味に
深みが増すんだよ。
加えてアンコウは身だけじゃなくて、皮も何もかもが美味しいから正に無駄にするところがないんだ――そんな訳で、ご賞味あれ!」
「頂きます♪」
良い具合に煮立って来た所で、器に注いでもらって、其れで一口……何だけど、此れは予想外の美味しさだよ!!
アンコウのぷりっとした身に、あん肝を合わせたコクのある味噌スープが馴染み、アクセントに加えられた鷹の爪が全体の味をキリっと引き締め
てる……此れは最高の味わいだと言っても過言じゃないよ!
「確かに、此れは美味しいわ。」
「凄く美味しいです……熊本のもつ鍋にも負けない美味しさです。」
「こんなに美味しい鍋は初めて食べました!……やりますね、会長さん。」
うん、梓ちゃんの言うように、こんなに美味しい鍋を食べたのは初めてです――でも、此れを食べさせるために私達を集めた訳じゃないんですよ
ね会長さん?
「まぁね。
アタシは君達にお礼をしたかったんだ――君達が居たからこそ、アタシ達は此処まで登って来る事が出来た訳だからね……本当に、君達には
感謝してるんだよ。
目標の優勝まではあと2勝……やって出来ない事は無いから、優勝を狙う以外にはないっしょ?」
「はい、勿論その通りです!」
「頼もしいね……次のプラウダもバッチリ任せたよ隊長!」
「お任せ下さい!」
っと言う訳で、会長さんの接待を受けつつ会長さんの部屋から出て来た訳だけど……今回の呼び出しは、何か意味があるんじゃないかって言う
予想は外れたかな――マッタクって何もないって言う訳では無いだろうけどね。
何にしても次のプラウダ戦も勝って、決勝戦にコマを進めないとだから――限界を突破した力を発揮する必要があるのかも知れないね。
プラウダ戦、楽しみになって来たよ!!
――――――
Side:まほ
『聖グロリアーナ、フラッグ車行動不能。
黒森峰女学院の、勝利です。』
ふぅ……此れで準決勝も突破して、残るは決勝戦だけなのだが……思った以上に聖グロに苦戦させられたな?――よもや、此処まで均衡する
とは思っていなかった。
ダージリン、お前は一体どんな戦術を考えていたんだ?
「其れは秘密ですわまほさん。
其れに、私が如何なる策を弄したとしても貴女は其れを『力』で越えてしまうでしょう?――尤も、此度の試合では、貴女らしさを微塵も感じる
事は出来なかったわ。
圧倒的な戦力を持ちながら、フラッグ車のみならず、全ての戦車を行動不能に追い込むなんて、フラッグ戦では必要ない事では無くて?」
「お前に其処まで思わせる事が出来たのならば、僥倖だよダージリン。」
お前がそう思ったと言う事は、此の試合を見ていたすべての人間がそう思ったと言う事だからね――きっと、誰もが『不必要な殲滅試合』だと思
って、黒森峰の戦い方に疑問を持つ筈さ。
尤も、1回戦からそうなるような戦いをして来た訳だがな。
「まほさん……貴女は一体何をしようとしているのかしら?
態々観客まで敵に回す様な戦い方をして、貴女は一体何を得ようとしているの――否、何を失くさんとしているのかしら?」
「ふ……其れは秘密だダージリン。」
まぁ、其れも此れも大洗が決勝戦までコマを進める事が出来なければ、全てが水の泡だけれどな。
だが、恐らくその心配は杞憂と言う奴に過ぎん――きっとみほ達ならば、破竹の勢いのある大洗ならば、プラウダが相手であっても最終的には
勝利をその手に掴むだろうからね。
一足先に、決勝戦の舞台で待っているぞ、大洗女子学園の諸君。
To Be Continued… 
キャラクター補足
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