ぽかぽか陽気の昼下がり。

日向ぼっこをしながらお昼寝と言う選択が極上の物に思える昼下がり。

そんな昼下がりに…

 

「遊星! 私を抱きしめて!」

 

一人の少女のとんでもないセリフが響いた。

 

 

 

 

 

「抱きしめて」

 

 

 

 

 

不動遊星はガレージにて動かしていた手をピタリと止めた。

 

「………龍可、それはどういう意味だ? それとそう言うセリフはあまり人前で使うべきじゃないと思うんだが…」

「へっ? えっと……!?」

 

ボンッ

 

少女、龍可の顔が一瞬で真っ赤に染まる。

 

ち、違うの! そう言う意味じゃ無くて、『デュエルで』抱きしめてほしいの!」

「……デュエルで?」

 

わたわたと慌てて訂正する龍可。

遊星はその中に気になる単語を見つけ質問する。

 

「デュエルで、と言うのはどういう意味だ?」

「えと…前にアキさんが言ってたでしょ? こういう言い方は変だけど、まだアキさんが私達の仲間じゃ無かった頃に遊星とアキさんが戦った時の事。
 『遊星がデュエルで私を抱きしめてくれた』って。」

 

そう言えばそんなことも言っていたな、と遊星は思い返していた。

 

「それで気になったの。それって一体どんな感じなのかなって。……ダメ…かな?」

「いや。俺にも良く分からないが、とりあえずデュエルをしてほしいと言う事なら喜んで引き受けよう。」

「ありがとう! 遊星!」

「礼は要らない。そう言えば龍可とデュエルするのは初めてだな…」

「そう言えばそうね。ちょうどデッキも組み替えた所だったし、全力で行くからね!」

「ああ、勿論だ!」

 

 

 

……………

 

 

 

「《スターダスト・ドラゴン》で《エンシェント・フェアリー・ドラゴン》を攻撃! シューティング・ソニック!!」

「くっ…うぅ…!」

 

《スターダスト・ドラゴン》から放たれた攻撃が《エンシェント・フェアリー・ドラゴン》を打ち砕く。

 

「更に(トラップ)カード《シンクロン・デストラクター》の効果により、自分のシンクロモンスターが破壊したモンスター、
 《エンシェント・フェアリー・ドラゴン》の攻撃力分のダメージを相手に与える!」

「きゃあああああああああああっ!!」

 

この一撃により、龍可のライフポイントはゼロ。

デュエル終了である。

 

 

 

……………

 

 

 

「負けちゃった…やっぱり遊星は強いね。」

「俺も何度か危なかった。またやろう。」

「うんっ。」

「…所で、何かわかったのか?」

「うーん…実はあんまり…」

「そうか…」

 

『やっぱりあの時のアキさんと今の私じゃ色々状況が違いすぎるのかな……まあ、遊星とのデュエルは楽しかったし、これでいっか。』

 

龍可がそう結論付けた時。

 

ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃんっ

 

ギュイイイイイイイッ

 

ギッガシャッガッ

 

ドギャアアアアアアンッ!!

 

外からとんでもない音が炸裂した。

 

よろっ…

 

「きゃっ…」

 

それはガレージを揺らすほどの衝撃となり、小さな龍可の身体はよろけてしまう。

地面にぶつかる。

そう思った龍可は固く目をつぶった。

 

とすっ…

 

ぎゅっ…

 

…が、覚悟した衝撃は訪れる事は無かった。

 

「大丈夫か?」

「ゆ、遊星!?」

 

遊星が倒れかけた龍可を自分の身体で支えている。

そうすると必然的に、遊星は龍可を抱きしめる形になるわけで。

 

「〜〜〜〜〜/////

 

頭では分かっていても心が追いつかない。

龍可の頭はショート寸前だった。

 

 

 

……………

 

 

 

そしてその衝撃の原因はと言うと…

 

「てめえジャック! なに無茶苦茶な運転してやがんだ!!」

「俺のせいだと言うのか!?」

「あったりめえだろ馬鹿野郎! こんな街中であんなふざけたスピード出す馬鹿がどこにいるんだよ!」

「俺のせいではない! ブルーノの奴が新しく追加したブーストプログラムを起動しただけだ!」

「それは加速が強すぎるから直線のコースでだけ使えって説明してただろーが!」

「何っ!? 俺はそんなこと聞いておらんぞ!」

「5回は説明してたっつーの!!」

 

まあつまり、メンテナンス後の試走に行っていたジャックとクロウだったが、どっちが先にガレージにつくかと言う勝負を始めてしまい、
ギリギリ負けそうになったジャックがブーストプログラムを起動。

有り余るスピードを制御しきれずに2台ともポッポタイムの壁に激突してしまったと言うわけだ。

クロウは完全に巻き添えである。

それだけの事故があったにも関わらず、二人にも2台にも目立った外傷や破損は無いのだから恐れ入る。

 

「やかましい!! またアンタらかい! 今日と言う今日はただじゃおかないよ!!」

「「げっ! ゾラ!」」

「壁の修理とその他もろもろ、覚悟するんだね!」

「ちょっと待て! これは事故だ!」

「そうだぜ! 悪いのは全部コイツ…」

「何か文句があるのかい?」

「「了解しましたぁ!!」

 

ジャックとクロウも大家には勝てず、耳を引っ張られて連れ去られてしまった。

 

 

 

……………

 

 

 

「ジャックとクロウが帰って来たのか…龍可、怪我は無いか?」

「う、うん…/////

 

スッ…

 

龍可が無事であることを確認した遊星は龍可から離れようとする。

 

ぎゅっ…

 

「?」

「アレ? え? えっと…あの…」

 

龍可は無意識のうちに遊星の服を掴んでいた。

 

「も…もう少しだけ…このままで…」

「? …ああ、分かった。」

 

ぎゅっ…

 

遊星は再び龍可を抱きしめる。

 

『デュエルで抱きしめてもらう事は出来なかったけど、遊星の身体、あったかくて気持ち良い…』

 

ぽかぽか陽気の日向ぼっこに勝るとも劣らぬ温度に包まれ、龍可は一時の幸せを抱きしめていた。

 

 

 

 

 

おまけ

 

「もう。二人ともD・ホイールをあんなに傷つけて…」

「ブルーノ、ちょっとストップ。」

「あれ? る…」

「シーーーーッ!」

「?」

 

2台のD・ホイールの修理の為にガレージから道具を持ってこようとしたブルーノ。

だが、何故か外で立ち尽くしていた龍亞に止められてしまう。

声を小さくしている龍亞にならい、ブルーノもコソコソと近づいていく。

 

「何かあったの?」

「うーん…何も無いけど…もう少しだけ待って。」

「? 何で?」

「兄貴の気遣いってやつ。」

「???」

 

ぽかぽか陽気と大切な人の温度と家族の愛情。

それを一身に受けながら、少女の昼下がりは過ぎて行った。

 

 

 

 

 

End.

 

 

 

 

 

後書き座談会

 

kou「遊龍可最高!」

遊星「いきなり何を言っているんだ。」

kou「ごめん。いやー色々探しても遊アキは多いけど遊龍可って少ないんだよね。」

龍可「それでこれ?」

kou「うーんと、蒼き流星の方を書くためにアニメを見直してたんだけど、アキのセリフを聞いて、それを横で聞いてた龍可はどう思ったのかなと思って。」

ブルーノ「デュエル部分はかなり短かったね?」

kou「妖精龍の効果を星屑で何とかしようと思うと難しいんだ。
   それに龍可のフィールド魔法って遊星から見たら破壊してもらった方が嬉しい《古の森》と、残った方が良いけど龍可自身も同条件の《シンクロ・モニュメント》だし。」

ジャック「最後はどういうことだ!?」

kou「アンタ負けず嫌いでしょうが。それに人の話を聞いて無い事は分かり切ってるよ。」

クロウ「俺…今回何もしてねえよな…?」

kou「うん。完全に巻き添え。毎回思うけど、クロウとジャックのケンカ腰の絡みってすげえ書きやすい。助かってる。」

アキ「私の出番は……?」

kou「貴女を出したらこんなほのぼので終われない…きっとカオスになる…止めて、黒薔薇は止めて。
   それはともかくとして、『遊戯王5D’s』のみの作品もこれが初だし、こんな短編らしい長さの短編も初めてだったりする。」

龍亞「時間的にはどのあたりなの?」

kou「WRGP辺りだね。その近辺の日常って事で。龍亞を理解ある良い兄貴として賭けてたら嬉しい。と言うわけでそろそろ。」

龍可「最後まで読んでくれてありがとうございました。」

遊星「また次回の座談会で会おう。」

kou「最後に……5D’s最高!!」

 

 

 

座談会終了