此処はとある世界の、とある街にある、とある学園。

いつも通りの、いつもよりも穏やかな時間が流れていた。

 

ピンポンパンポーン♪

 

『高等部3年、不動遊星君、理事長室にご足労願います。繰り返します。高等部3年、不動遊星君…』

 

穏やかな時間が終わりを告げた。

 

 

 

「支持率と臨時教師」

 

 

 

「そういうわけで、貴方に臨時教師となってもらいたいのです。」

「どういうわけだ。」

 

ホントにどういうわけですか理事長(ゴドウィン)さん…

とりあえず説明をお願いします。

 

「実は先日から、クロノ先生他数名が行方不明なのです。」

「そう言えば最近朝に突っかかって来なかったな。」

 

結構重大な発表ですよそれ?

と言うか遊星さんにとってはその程度の認識なのねクロノは…

そして行方不明ってどういうことよ?

 

「書き置きによると、『遊星から妹を取り戻すため、山にこもってドロー力を身につける』との事です。」

 

なんのこっちゃ。

遊星、心当たりは?

 

「ドロー力と言う単語から察するにデュエルの事だと思うが…関係有るかどうかはともかく、先日クロノと恭也とデュエルしたのは確かだ。」

 

あの2人と…

 

「『フェイトを賭けてデュエルだ!』と意味の分からない事を言っていたが、挑まれたデュエルは受けて立った。」

 

いや、どう考えてもそれが原因っしょ。

ちなみに、デュエルの内容は?

 

「アイツが先行。攻撃力0の《王立魔法図書館》を自信満々で攻撃表示で召喚してきた。」

 

恐らくは典型的な【図書館エグゾ】でしょうね。

 

「『おいおい、これじゃ…(Me)の勝ちじゃないか!』とも言っていたな。」

 

何言ってんだあのシスコンは…

 

「嫌な予感がしたので、《エフェクト・ヴェーラー》の効果を使わせてもらった。」

 

わーお。

 

「そうしたら絶望的な顔をしてエンド宣言したので、次のターンに《ボルト・ヘッジホッグ》と《クイック・シンクロン》と《ジャンク・シンクロン》で《ジャンク・ウォリアー》と《ジャンク・バーサーカー》を召喚してとどめを刺した。」

 

1キル未遂に1キル返しか…

で、恭也とは?

 

「『なのはを賭けて(以下略)』と言っていた。意味は分からなかったがもちろんデュエルは受けて立った。」

 

ですよねー。

何かもう2つの意味で『ですよねー』だよ。

 

「『後攻1キルを見せてやる!』と言っていたので、先攻は貰った。」

 

ふむ。

 

「いつものデッキじゃなく、拾ったカードの整理も兼ねて、新しいデッキを試してみたんだ。」

 

ふむふむ。

 

「《シューティング・クェーサー・ドラゴン》を3体並べたら恭也の目が死んでいた。」

 

マテや。

一体どうやった。

そりゃ眼も死ぬわ!

 

「それで相手は何もせずにエンドし、返しのターンでダイレクトが決まった。以上だ。」

 

色々言いたい事もあるが、そりゃドロー力を鍛えたくもなるわ。

それこそ初手エグゾディアが揃うくらいの運命力が無いと、遊星にあいつらが勝つことは難しいんじゃなかろうか…

 

「確率的には65万8008分の1。決して0じゃないな。」

 

0じゃないけどキツイって…

 

「話を戻すが、恭也はあくまでOBであって、いなくなった教師はクロノだけなんじゃないのか?」

「それがそうでもないのです。クロノ君と恭也君が先導し、この学園に妹や娘がいる教師や男子生徒の多くが姿を消しています。ちなみにゲンヤ先生は残っていますが、ハッキリ言って人手不足です。」

 

ゲンヤさんは娘さん達みんな遊星一直線だし、ゲンヤさん自身がその遊星を気に入ってるからね。

取り戻す必要は無いでしょう。

あれ、これって所謂『親公認』?

 

「話は分かった。だが、何故俺に?」

「教師以上の頭脳と成績。生徒達からの好感度及び支持率。引いては教師陣からの信頼もある貴方だからです。」

「買い被りすぎじゃないか?」

 

D・ホイールを手作りする人が何を仰る…

 

「そんなことはありません。以前行ったレポート(『誘拐と自業自得と謎の課題』参照)でも、貴方を支持する人は大勢います。学園を助けると思って、力を貸してはくれませんか?」

「……分かった。俺でよければ引き受けよう。いつからだ?」

「今日これからすぐにでも。ゲンヤ先生に連絡しておくので、彼から色々聞いてください。」

「分かった。」

 

さてさて。

これが臨時教師不動遊星の誕生であった。

 

 

 

ピンポンパンポーン♪

 

『学園理事長、レクス・ゴドウィンです。突然ですが本日から暫くの間、高等部3年、不動遊星君に臨時の教師をやってもらうことになりました。生徒諸君からもサポートをお願いします。』

 

ピンポンパンポーン♪

 

プツッ

 

シーーーーーーーーーーーーン………

 

放送が切れると同時に、学園内から一切の音が消えた。

そして…

 

『わあああああああああああああああああああっ!!!!!』

『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!』

『きゃああああああああああああああああああっ♪♪♪♪♪』

 

響き渡るのは歓声。

学園全体が揺れるほどの威力だった。

 

 

 

「なんだ、騒がしいな。ゲンヤ、何があったんだ?」

「当事者が何言ってんだ。」

「?」

「まあいい。とりあえず机はそこを使え。」

 

場所は変わって職員室。

ゲンヤさんが遊星を案内中。

ちなみに職員室内の女性教師の数名もきゃあきゃあ言っていたのは言うまでも無い。

 

「男の教師が数名抜けたから、空いている俺らでシフトを組んで穴埋めすることになる。不慣れな点もあると思うが頼むぞ。」

「ああ。」

「何かあったら全部クロノに責任取ってもらうから安心しろ。」

「分かった。」

 

クロノ哀れ…いや、自業自得か。

 

「ちなみにだが、現時点でクロノ他、自分の意思でいなくなった教師連中は3ヶ月減給。

 お前が何かミスしても、減るのはあいつらの給料だから心配するな。

 で、お前のポイントはお前の成績及び、俺の給料を経由してお前の小遣いになる。」

「良いのか?」

「生徒のお前に頼んでるんだ。このくらいは問題じゃないそうだ。」

「分かった。」

 

ま、遊星ならクロノ達の給料が0になるなんて事態にはならないでしょう。

もしそうなったとしても自業自得なので全力で無視。

所でゲンヤさん?

その風呂敷は?

 

「ん? ああ、クイントが持たせてくれたんだ。遊星が職員室に来たら渡してくれってな。」

「俺に?」

 

しゅるっ…

 

さて、中身は…?

 

 

 

―――朝・中等部―――

 

「ねえティア! ねえねえティア! 聞いた? 聞いた!?」

「うっさいわね! 聞いたわよ! さっきから何回目よ!」

「ユウ兄が先生だよ! 嬉しくならなきゃ嘘だもん!」

「そりゃ私もちょっと嬉しいけど…///// 落ち付きなさいって。私達のクラスに来るとも限らないでしょうが。」

「来てくれたら嬉しいっすけどねー。」

「他の教師連中よりだったら、兄貴の授業の方が面白そうだしな。」

 

こちらは中等部。

ブラコン全開なスバルを始め、遊星大好きっ子達が会話に花を咲かせている。

そしてクラス中で、特に女子の輪ではみんな同じ話題で盛り上がっている。

何せ学園全体にファンがいる遊星の授業を受けられるかもしれないのだ。

たとえ可能性の話であっても、テンションが上がらない筈が無い。

 

「でもよスバル…」

「分かってるよノーヴェ。お兄ちゃんに不用意に近づく子は全力全壊でってなのはさんからも連絡が来てるし。」

「フェイト先輩経由のリンディ学園長情報だと、たとえ何が原因で何が起こっても、クロノ先生の責任って事らしいわ。」

「つまり、何やっても良いって事っすね♪」

 

おいこら。

アンタらは何素敵な笑顔で物騒な事言ってんすか!?

 

「大丈夫だよ。非殺傷設定にはするから♪」

 

止めい!

ってか一応クロノの事も考えたれよ!?

 

「リンディ学園長曰く、『思う存分やっちゃって♪』」

「フェイト先輩曰く、『遊星の事を最優先で!』」

 

母親&義妹!?

もういいや…せめて血は流さないようにね…

 

ガラガラッ

 

「さあ、みんな席についてくれ。」

「「「「「!!!」」」」」

 

そこに現れたのは渦中の人、遊星。

装備は制服の上をゲンヤの予備のスーツに替え、更に白衣と伊達眼鏡だ。

スーツはともかく、他はどうした?

 

「ゲンヤから受け取ったクイントさんからの風呂敷に入っていた。」

 

あの人はエスパーか!?

 

『ふふふっ♪ 母親たるもの、常に周りの5歩先を行く物よ?』

 

先読みしすぎだよ!?

現時点でクラスの女子に大ダメージですが!?

何名か流血してますよ!?(鼻血的な意味で)

 

「母さんがティッシュ5箱持ってけって言ってた理由が分かった…」

『ご心配なく! アフターフォローも万全よ♪』

 

どこのBIG5ですか貴女は!?

 

「みんなどうしたんだ?」

「あー…にいにいは気にしなくっても大丈夫っすよ。」

「そうか…だがウェンディ、暫く俺は仮とはいえ教師だ。先生と呼んでくれ。」

「了解っす。にいにい先生。」

「うん。」

 

良いの!?

今の呼び方で良いの!?

 

「形式上の物だしな。そこまできつく縛るつもりはないさ。」

 

毎朝突っかかってくるシスコンとはえらい違いやね…

器の大きさかな…

 

「遊星さ…不動先生、質問です。」

「どうした、ティアナ。」

「不動先生はこれから暫く私達の担任と言うことになるんでしょうか?」

 

ギンッ

 

この質問に生徒(主に女子)の目付きが変わる。

 

「いや、俺は補充要員のようなものだ。色々なクラスの様々な教科をカバーしていくことになるだろう。」

「「「「「何だ……」」」」」

 

明らかにガッカリしてますな皆さん。

 

「俺に限らず、いつもの教師が担当じゃない事も多くなるだろうが、そこはみんなでカバーしてほしい。」

「「「「「はいっ。」」」」」

「頼もしいな。(にこっ)」

 

ズキュ〜〜〜ン♪

 

「はうっ…」

「はぁん…」

「あぁっ…」

「我が生涯に悔い無し…」

「見えるわ…此処が《天空の聖域》なのね…」

 

遊星スマイルの威力に、多少の耐性のあるスバル達以外の女子はほぼ全滅していた。

むしろ他界しそうな奴もいるが…

 

「兄貴が授業を始めれば復活すんだろ。」

 

さいですか。

まあ実際その通りだったので気にしない方向で。

 

 

 

―――算数・初等部―――

 

「うー…えっと…8が3で、繰り上がって…1…じゃなくて…」

 

遊星先生、今度は初等部での授業中。

大きい数字の計算問題。

何名かに解いてもらったのだが、龍可、エリオ、キャロは難なく正解。

躓いているのは龍亞である。

ちなみに問題は「34×3+25×2」暗算では難しいかもしれないが、一つずつゆっくり解いていけば…

 

「龍亞、お前の場に《D・ラジオン》が3体と、《D・モバホン》が2体。全てのダイレクトアタックが成立したらダメージはいくらになる?」

「えっと、ラジオン3体の効果でラジオンの攻撃力は3400、モバホンは2500だから…15200ポイントのダメージ!」

「じゃあそれを100分の1にしたら?」

「152!」

「正解だ。なんだ、出来るじゃないか。」

「へっ? あ!」

 

遊星さんの導き方上手いな…

無理に教えるんじゃ無く、相手の好きな事に例えて教えていく。

誰かに教えるときはこういう目線を持つ事が大事です。

 

「遊星凄い…」

「うん。龍亞君があんなにあっさり解いちゃうなんて…」

「遊星さんって、こういう仕事が天職なんじゃ…」

 

龍可もキャロもエリオも感心しております。

教室の前では尊敬する遊星に頭を撫でてもらって嬉しそうに笑っている龍亞の姿があったそうで。

 

 

 

―――体育・高等部1年―――

 

「よっ、遊星。万能タイプは大変だな。」

「ヴァイスか。そうでもないさ。みんな良い子で助かっている。」

「助かってるのは俺らの方だけどな。俺みたいな1つの事しか出来ねえ奴らはそれをやるしかねえが、お前みたいに何でも出来る奴は引っ張りだこだろう?」

「俺はそんなに凄い人間じゃないさ。今だってお前や周りに支えられている。」

「謙虚な所もお前の美点なんだろうねぇ。」

「?」

「こっちの話だ。」

 

体育教師のヴァイス先生。

生徒達の間では気さくな先生として人気を持っている。

今は雑談中…などではもちろん無く、外で女子ソフトボールの監督をしている。

男子?

男子は体育館の中でバスケでもしてるんじゃないっすか?(適当)

 

「教師は大変だろ?」

「ああ。だが、この視点になってみて分かる事もある。改めてゲンヤやヴァイスは凄いと思ったよ。」

「…全く。そういう真っ直ぐな所もお前の美点だよな。」

「?」

「気にすんな。」

 

一方その頃、生徒達は…

 

『三振で仕留める!』

『絶対に打つ!』

『取って見せる!』

『『『不動先生に良いところ見せる!!』』』

 

…良くも悪くも心が一つになっていた。

 

「「「「………」」」」

 

はいはいそこ。

ブリッツキャリバー出さない。

スティンガー出さない。

イノーメスカノン出さない。

黒薔薇召喚しない。

 

「「「「だって…」」」」

 

他の人の妨害したら、遊星が悲しむよ?

 

「「「「う…」」」」

 

だったら自分達が活躍して、遊星にアピールした方が良いんじゃない?

 

「「「「!」」」」

 

あ、眼の色が変わった。

 

カキィンッ…

 

アキさん場外ホームラーン…

 

ぶいっ

 

にこっ

 

アキさんのピースに笑顔で応える遊星。

その笑顔の流れ弾を喰らった何人かがダメージを受けた事は追記しておこう。

 

キンッ

 

チンクが2塁打。

 

キンッ

 

続いてディエチが3塁打。

ベースの上で手を振る彼女達に対し、遊星はもちろん笑顔で返す。

そして流れ弾で(以下略)

 

キィンッ

 

これも大きい。

ギンガが打ったボールはホームランとは行かない物の、グラウンドの奥まで刺さる。

 

「む…」

 

遊星が何かに気付く。

外野からの大遠投が少しずれているのだ。

 

「ギンガ!」

「えっ…」

 

突然の遊星の声に驚いたギンガは即座に背後を確認し、遠投されたボールを躱す。

…が、無理な避け方をしたために、体制を崩してしまった。

 

くきっ

 

「っ!」

 

地面との激突を覚悟し、目をつぶるギンガ。

 

とすっ…

 

だがその衝撃は訪れなかった。

自らの兄が優しく抱きとめていたのだから。

遠投の方向がずれている事に気付いた瞬間に遊星は走り出していたのだ。

 

「に、兄さん!?/////」

「大丈夫か、ギンガ。」

「は、はい、だいじょ…っ…」

「挫いたのか。少し我慢してくれ。」

「ふぇっ?」

 

ひょいっ

 

「にっ、ににににに兄さんっ!?/////

 

所謂『お姫様抱っこ』と言う形になり、真っ赤な顔をするギンガ。

真っ赤な顔をして手足を縮みこませる姿は、普段クールに見える彼女とは違う可愛さを持っていた。

 

「済まないヴァイス、保健室まで行ってくる。」

「おー。」

 

緊張感の無い返事だが、これも遊星を信頼している故だろう。

 

「兄上…カッコいい…」

「流石お兄さん…」

「遊星、素敵…」

 

残された3人、いや、ほぼすべての女子がノックアウトされていた。

中には『何故私はもっと早くコケなかった!』とか意味のわからない叫びをあげている生徒もいた。

ちなみに遊星に見とれつつも、チンクとディエチは持っていた小型デジカメ(遊星作)で何枚も撮影していた。

 

「姉上へのプレゼント用と。」

「みんなへの報告用。」

 

前者はともかく、後者はなんか恐いなオイ…

 

 

 

「失礼する。シャマル…はいないようだな。」

 

保健室到着。

いつもこの部屋にいる養護教諭のシャマル先生はどうやら不在のようだ。

実際は遊星スマイルの餌食となった生徒達の救護に向かっているようだが。

 

「兄さん…と、とりあえず、降ろしてください…/////

「ああ。」

 

ふわっ…

 

遊星はギンガを優しくベッドに座らせる。

 

「仕方ない。応急処置は俺がやろう。シャマルが戻ってきたらしっかり見てもらえ。」

「はい…あの、兄さん?」

「なんだ?」

「あの…重く無かったですか?」

「むしろ軽すぎだ。ちゃんと食事は…とっていたな。」

 

遊星はギンガの…と言うよりはナカジマ家の食事風景を思い出す。

ナカジマ家の中でもギンガ、スバル、ノーヴェ、ウェンディは良く食べるのだ。

それでいて体形に変化なし。

これが痩せの大食いと言う物だろうか…

 

「まあ…その…母さんの料理は美味しいですから…/////

「たくさん食べるのは良い事だ。靴を脱がすぞ。」

「あ、はい。」

 

そう言って遊星はテキパキと応急処置をほぼ完璧にこなしていく。

 

「痛むか?」

「いえ、大丈夫です。」

「そうか、痛みがあれば無理はするなよ。」

「はい。」

「今日はスバルの日だったな…スバルには俺から事情を話しておく。今日は俺が家まで送ろう。」

「えっ!? そんな! スバルに悪いです!」

「調子が悪い時くらい甘えていいんだ。それで無くともギンガは一人で背負いこみがちだからな。」

 

ぽんぽん

 

遊星はギンガの頭を優しく撫でる。

 

「…兄さんがそれを言いますか?」

「ふっ…そうだな。」

「もう…ふふふっ。」

 

苦笑する遊星が何だか可笑しく、ギンガも笑っていた。

 

 

 

「そういうことで、すまないがスバル。今日はギンガに譲ってくれないか?」

「もちろん! ギン姉大丈夫なの?」

「痛むようだったら無理するなと伝えてある。大丈夫だろう。」

「兄貴…先生のD・ホイールなら家まででも病院まででも一瞬だしな。」

 

遊星は登下校のタンデム権をギンガに譲ってくれるように交渉中。

交渉と言っても、仲の良い姉妹なので、即答で譲ってくれた。

ホントに良い子たちだ。

 

「そう言えば今日はシャマル先生をあちこちで見かけるわね…ギンガさんの治療はいつになるのかしら…」

 

あるいは保健室に戻れないかもしれないね…

 

「その件なら問題ない。さっきキャロに連絡して回復魔法(ヒーリング)をしてくれるように頼んできた。」

 

流石ぬかりない。

無理は禁物だけど、キャロに任せておけば大丈夫でしょう。

 

 

 

―――数学・高等部3年―――

 

「良し。3人とも正解だ。」

「「「えへへ〜♪」」」

 

こちらは高等部。

なのは、フェイト、はやてが問題を難なく解き終わった所。

いつもと違うかっこよさを持つ遊星に褒められ、3人とも上機嫌。

 

「流石だな。これからもこの調子でな。(にこっ)」

「「「はぅっ!」」」

 

結構な至近距離で遊星スマイルの直撃を受けた3人は瞬間的に顔を真っ赤にする。

遊星+白衣+眼鏡と言うコンボの前では、多少の耐性を持つ3人と言えど例外では無かったようだ。

当然遊星スマイルの流れ弾が(以下略)

 

「それじゃあ次にジャック。『フェルマーの最終定理』を解いてくれ。」

「無茶を言うなぁ!!」

 

ちょいと遊星さん!?

どう考えても学生レベルの問題じゃねえですよ!?

しかもよりによってジャックかい!?

 

「クロノが置いていったノートに書いてあった。本来は俺に解かせるつもりだったらしい。」

 

あんのシスコン教師…

…ちなみに解けます?

 

「答えは知っているし、理解も出来ている。」

 

流石としか言いようがないっすわ…

 

「遊星さんなら、他の問題も解けたとしても不思議じゃないの…」

「そやなぁ。まあ正直、クロノ先生が遊星に勝つなんて不可能とちゃう?」

「それはそうだろうね。ほんっとにあの愚兄は…」

 

辛辣やね皆さん。

でも、その愚兄の奇行のおかげでこうして『不動先生』が成り立っているわけですが?

 

「その点だけは認めても良いかな。」

「「同じく。」」

 

はい。遊星大好きっ子の息ぴったりのハモリをありがとう。

 

 

 

―――お昼休み―――

 

「ギンガ、足の具合はどうだ?」

「にい…不動先生。ありがとうございます。もう大丈夫です。」

 

キャロの回復魔法(ヒーリング)が効いたようで何より。

 

「そうか。だがすでにスバルとは交渉済みだ。今日は真っ直ぐ家に送らせて貰うぞ。」

「もう…はい、ありがとうございます。」

 

苦笑しながらも、遊星の優しさに感謝しているギンガであった。

 

「それじゃあ済まない、次の授業の準備があるからな、これで失礼する。」

「はい。頑張ってください。手伝えることがあれば言ってくださいね?」

「ああ。ありがとう。」

 

そう言って遊星は立ち去っていく。

その背中を見送るギンガ。

ホントに平和だね…

 

「ギ〜ン〜ね〜え〜?」

 

平和だったね…

 

「スバル? どうしたの?」

 

かちゃっ

 

「………!!/////

 

スバルが取り出した携帯には、ギンガと遊星のツーショット写真が表示されていた。

具体的に言うと先程のお姫様抱っこの写真が。

 

「え、えっと…それはね? スバル? 事故の産物であってね?」

「詳しい話は屋上に行ってからね♪ みんな待ってるから♪」

「ちょっとスバル!? 目が笑ってないわよ!?」

 

これから尋問…もとい。お話が開始されるようですね。

あんまり手荒な真似はダメですよ?

 

「それはもちろん! ただ、このシチュエーションについて詳しい話を聞きたいの!」

 

それは何故?

 

「羨ましいから!」

 

真っ直ぐな子たちやねホントに…

 

 

 

―――放課後―――

 

「待たせたなギンガ…どうした?」

「ううん…少し疲れただけ…」

 

あの後じっくりと話を聞かれたようですね。

改めて語る事の恥ずかしさと、思い出し照れと言う二重の精神的疲労が襲うわけだから疲れるでしょう。

 

「そうか…なら、早く帰ろうか。」

「はい。兄さんはもう仕事は?」

「すでに終わっている。」

 

仕事早っ!?

 

「D・ホイールまでおぶってやろうか?」

「遠慮しておきます…/////

 

 

 

ぃぃぃぃぃぃぃぃぃん…

 

遊星の運転するD・ホイールは軽やかに疾走している。

なるべく震動が発生しないように細かな運転をしているのも、遊星の優しさだろう。

 

「ねえ、兄さん。」

「なんだ?」

「言い忘れた事があるの。聞いてくれる?」

「ああ。」

「ありがとうございます。兄さん。」

「何がだ?」

「…色々、です。」

「………」

 

返事は無かったが、ギンガは兄が笑っているのを感じていた。

 

夕日が2人を照らす。

明日からもこの少しだけいつもと違う毎日が続くのだろう。

だからこそ、ギンガは自身の兄であり、家族であり、大切な人であり、今は教師である人に言葉を伝える。

 

「明日からも、よろしくお願いします。兄さん。」

 

 

 

 

 

おまけ

 

「………リンディ学園長。これをどう思いますか?」

「あらあら。」

 

そこにあるのは大量の投書。

内容は…

 

「『不動先生の正式採用求む』『遊星先輩を私達のクラスの担任に』『クロノ先生と交換したら?』などなど…」

「凄いですね…」

「多少なりの反響がある事は予想していましたが、まさか初日で此処までの投書が来るとは流石に予想外です。」

「………」

「リンディ学園長?」

「この際、遊星君が卒業次第、採用しちゃいましょうか♪」

「なるほど、良いですね。」

 

遊星本人の意見ガン無視ですか!?

 

次の日から、遊星を教師に引き込むための交渉が開始されるのだった。

 

 

 

おまけ2

 

姿を消していた連中が戻ってくると、教師は減給に、生徒は補習課題にショックを受け、修業の成果を出す事も出来ず、全員まとめて遊星が薙ぎ払った事を追記しておこう。

 

 

 

 

 

終わり

 

 

 

 

 

kou「疲れたし長いし内容薄くね?」

遊星「いきなり何を言っているんだ。」

kou「いや、正直ね? ギンガをお姫様抱っこすることと、シスコン2人のやられざまは考えてたんだけど、それ以外全くのノープランの見切り発車。」

スバル「いや、ちゃんと考えようよ…」

kou「ごもっともです。」

ギンガ「今回は私がメインともとれるのかしら?」

kou「そうだね。少なくとも一番役得なキャラだったと思うよ。」

なのは「理由は?」

kou「やっぱりスバルと比べると、ギンガはクールで落ち付いていて、他のメンツみたいに素直に甘える事って少ないんじゃないかなと思って。」

フェイト「遊星の笑顔の威力については?」

kou「無表情キャラの笑顔って破壊力抜群でしょ!」

はやて「まあ確かにな…今回シャマルの出番あるかと思ったんやけど、名前だけやったな。」

kou「出しても良かったんだけど、シグナム姐さんやヴィータが出てないのに出していいものか普通に迷ったんだ。」

ギンガ「それで結局登場は無しにしたと。」

キャロ「また学パロなわけですけど、学パロ好きなんですか?」

kou「好きだね。本来なら学校に行ってるはずの年齢なのに、何らかの事情があって行けていない。そんなキャラ達を学校と言う舞台に連れて言ったら何が起こるのか。」

龍亞「なんかそう言われると面白そうだね。」

kou「学校って、数多くのイベントが起こる場所でもあるし。そして『学校に通える』ってのはある意味平和の象徴かなとも思うわけなんだよ。5D’sを見てると余計に。」

龍可「確かに遊星達は義務教育すら受けていないんだものね…」

kou「それでどうやってD・ホイールを手作りしたのか…まあそれも全て『遊星だからなぁ』で片づけようとしてる自分もいる。」

遊星以外「あぁ〜…」

遊星「?」

kou「結論。遊星は色んな意味で最強。それじゃこの辺で。」

ギンガ「また次回の座談会でお会いしましょうね。」

 

 

 

 

 

座談会終了